「第5回」 5月31日 3・4時間目(通算第9・10回)

教材:教科書

 (1)マイコンの発表とコメント

    今回のテーマは「歩きスマホ」。歩きスマホをしていて駅のホームから転落して
   しまった事故例を挙げながら、これほど危険な行為であるのに、なぜ止めることが
   できないのかという主張です。
    3人のコメンテーターからも発表者の主張を支持するコメントが出され、問題意識が
   共有されていることが確認されました。

   BlogPaintBlogPaint

     発表もコメントも、それ自体は理路整然と展開されていたので、とても分かりやすい
    ものだったのですが、特にコメントについてはその内容にかなり不満があったため、
    次のような投げかけをしました。

     「…で、君たちの主張は何?」

     発表者は自分が気になっているテーマについて問題を提起する役割なので、いわば
    「投げっぱなし」でも構わないのですが、コメンテーターはそれについて自分の考えを
    主張しなければなりません。にもかかわらず、今回のコメントのほとんどが「感想」
    あるいは「努力目標の提示」に過ぎなかったのです。
     提起されたテーマが、今までに自分が考えてもみなかった事柄であるならば「感想」
    を述べるだけでもやむを得ませんが、今回のように高校生である自分たちにとって
    極めて身近なテーマについて「感想」を述べるだけでは、あまりにお粗末です。
     小論文を書く際にも結論が「努力目標」で終わる文章は論文として認められないのと
    同様に、身近なテーマを取り上げたマイコンについても、小論文とは違い即答が求め
    られる点は割り引いたとしても、「感想」と「努力目標」では及第とは言えません。

     以上のような話をクラス全体に向けてした後で、主張(意見)構築の基礎となる
    解決のための「仮説」をクラス全体に問いかけました。

     「では、解決のための具体策として、何が考えられる?」
     「有効な解決策があるならば、それは既に実行に移されているだろうし、高校生が
    一瞬で思いつくようなことなどはスマホのメーカーの開発者や通信会社の人たちは
    とっくに思いついているだろう。つまり、正解などはどこにもない、そういったテーマに
    ついて頭を悩ませてみよう。」

      するとすぐにいくつもの意見が出されました。また出された意見についてすぐに
    その弱点が指摘されたりします。

     「歩くスピードを感知して画面がシャットダウンするようにしたらいい」
     「速度感知だと、電車の車内で座っていても使えないんじゃないか」
     「GPSと連動させれば…」

      いくつもの意見が出ますが、どの意見も同一側面からのものだけです。そこで
     次のように口を挟みます。

      「今、いろいろな考えが出てきたが、すべて切り口が同じことに気づいているか?」
      「その切り口とは何か?」

      今回のテーマは「歩きスマホ」。ここには少なくとも2つの観点が存在しています。
     すなわち「歩き」と「スマホ」の2つです。言い換えれば「使用する人間」にまつわる
     部分と、ハード面、「機器としてのスマホ」にまつわる部分です。そして生徒たちから
     出された意見のすべてが「ハードの改善」策でした。
      もちろんそのこと自体が悪いわけでは全くなく、出された意見も創造性に富んだもの
     が多くありました。しかし、私が生徒たちの話し合いを聞いている中で指導項目として
     設定したのが先述の点だったのです。

      1つ目は、思考課題について仮説を立てる際の「切り分け」(私の授業では、場合
     分けと表現します)の重要性を指導すること。
      もう1つは、今回「人間についての解決策」が提示されなかったことの意味を深く考え
     解析させること。
      この2点です。

      結局この後、これら2点について私も入って議論することで、1コマを費やしてしまい
     ました。

      BlogPaint

       その詳細を書いていると、どれほどの長さになるか想像もできないので、ここまで
     とします。


 (2)「水の東西」

    前回の授業の続きです。学習のめあては「段落の要点」をまとめること。

    この文章は一読でその内容がスッと頭に入ってくるので、中学校で指導されてきた学力
   でも、生徒たちはそれなりの「段落の要点」を作ってしまいます。
    しかしそれでは『論理エンジン』を学習している意味がありませんし、なにより子どもたち
   の思考力も表現力も、次のステージにステップアップしていくことができません。
    現在の学習で最も重要なのは、現在の学力の欠如部分を発見・認識し、それを『論理
   エンジン』のメソッドで確実に埋め合わせていくことです。そのためには、自分なりにまとめ
   た「段落の要点」について、そこに至る思考ルートを相互に発表し、確認していく学習が、
   最も効果的です。

   BlogPaintBlogPaint

    すべての形式段落についてこれらの作業を行っていくほど潤沢に時間があるわけでは
   ないので、グループ学習に取り上げる段落は私が指示をします。
    今回は第3段落を取り上げました。
    グループでの話し合いの結果、グループでまとめたものを黒板で発表します。そして、
   すべての班が作った「第3段落の要点」を比較しながら、さらに検討を進めていきます。

    今日の授業は前半のマイコンでかなり時間を使ったため、後半にそのしわ寄せがきて、
   ここで授業終了となりました。したがって、次回の授業はここから始まります。