今回は年間指導計画づくりを考えていきます。

 『論理エンジン』は中学校で扱っていらっしゃる先生方も多い教材ですが、今回は高校1年生を対象とした、国語総合での指導を考えます。


(1)国語総合の指導スタイル

 国語総合は標準単位が4単位の科目です。国語総合の最大の特徴は「現代文と古典(古文・漢文)とをともに指導する」点にあります。そのため、指導スタイルが大きく2つに分かれます。

 ① 現古混合スタイル

 現代文と古典とを概ね交互に指導していくスタイルです。
 昭和50年代後半に、それまでの「現代国語」「古典一乙」といった科目が「国語Ⅰ」に集約されたことをきっかけとして定着したスタイルだと思います。
 「国語総合」が1冊になっている教科書を採択している学校で多く見られ、現代文と古典とを「一人の先生」が担当している場合には、おそらくこのスタイルになることが多いのではないでしょうか。

 具体的には、4月第2週(4時間)で現代文の導入教材を指導し、第3週・第4週(計8時間)で古文の導入指導を行う。GW明けには現代文の小説を読み、それが終わって漢文に入る、といった授業進行になります。したがって年間指導計画も「国語総合」として一本の計画が作られることになります。

 ② 現古分割スタイル

 現代文と古典とを分割して指導するスタイルです。
 教科書については分冊タイプを採択している高校も多く、指導する教員も現代文と古典とで持ち分けているケースが多いと思います。

 具体的には、国語総合4単位が月・火・水・木曜日にそれぞれ1単位ずつ割り振られた時間割になった場合に、現代文を月・水曜日の2単位、古典を火・木曜日の2単位で指導するといった授業進行になります。したがって、現代文と古典とでそれぞれの年間指導計画を立てることになります。


 もちろん、上記①②を指導時期によって混在させる学校や、②だけれども一人の教師が現古の両方を指導している学校など、その指導スタイルは多様で、指導スタイルの優劣は全くありません。
 しかし、『論理エンジン』を効果的に指導していくにあたっては、②「現古分割スタイル」が最適であると、私は考えています。
 その理由はいくつもあるのですが、最大の理由は「指導が継続するから」ということです。

 当たり前のことなのですが、①「現古混合スタイル」を取った場合、古典の学習をしている間は現代文の学習は行いません。(家庭学習教材=宿題などで補うことも考えられますが、家庭学習時間の多くを英語や数学に費やさねばならない生徒の現状を考慮すれば、現代文の家庭学習に大きな効果を期待することは難しいでしょう。)
 結果的には、2週間あるいはひと月近くも現代文について教師の指導を受けないことになってしまいます。
 もちろん年間指導計画を立てるにあたって この「現代文指導の空白期間」を50%にすることができれば、年間の指導時間は、(その量だけで見れば)②と変わらないのですが、実際にはなかなかそのような計画を立てるのは困難です。
 というのも、中学国語と高校国語との最大の違いが「古典」にあるからです。
 生徒たちは高校に入学して初めて古典を本格的に学習します。したがって高校1年生では古典について丁寧に指導を開始しなければなりません。子どもたちの興味・関心を喚起しながら、同時に知識事項もしっかりと定着させていく必要があります。結果として古典に配する時間は自然と多くなってしまうのです。

 しかし、この状況を私は全く容認しません。私も長く古典の指導も行ってきていますから導入古典指導の重要性については十分認識していますが、それでもなお「古典偏重はやむを得ず」という考えには同意できません。なぜなら(生徒はともかくとして)指導する教師の意識の中に、「現代文は何とかなる(のでは?)」といった甘い認識が見え隠れしているからです。
 以前にもこのブログで書きましたが、この「何とかなる」意識こそが、子どもたちの論理的思考力を育成してくることができなかった最大の悪因です。それを根本から払拭するための教材が『論理エンジン』であり『思考ルート』ですから、その教材を使って指導していく以上は、「何とかなる」意識を構造的に排除できる。②現古分割スタイルを強くお勧めします。


(2)年間授業時数の学期別設定と教材割り付け

 ① 年間授業時数の学期別設定

 これは単純な計算です。原則として年間指導週は「13+13+9=35」ですが、行事などの都合もあり、この達成は難しく、開智高校では「12+12+8=32」を実授業最低実施週としています。これを下回ることはよほどの非常事態が発生しない限りありません。
 
 これに基づいて学期ごとの指導時間を計算しますから、1・2学期は「24時間」、3学期は「16時間」ということになります。

 ② 教材割り付け

 与えられた24あるいは16時間に教材を当て込んでいきます。ここで重要になる観点が、前回先生方に考えていただいた「教材観」になります。
 教科書教材についての教材観と『論理エンジン』についての教材観とを突き合わせてレイアウトしていきます。どちらかの教材観が不十分だと、この作業はストップしますので、十分な教材研究を済ませておきます。
 ディベートや学びあいなどを取り入れる場合には、それらをどこで行うかも決定しておきます。

 『論理エンジン』を軸とした計画は、多くの先生方が立てにくさを感じると思います。まずは教科書教材を軸として立案してみてください。


(3)1学期の指導計画(24時間分)

 1学期の指導のポイントは「『論理エンジン』の学習動機の定着」です。したがって教科書教材は最小限にとどめます。

 ① 教科書教材を決める。

 説明的文章教材を1つ選択します。教科書内のどの位置に掲載されているかにはこだわらず(その位置は教科書会社が勝手に決めただけですから)、『論理エンジン』での指導内容と考え合わせながら、導入教材として理解させやすい構造の文章を選びます。指導時間は「4時間」とします。

 小説教材を1つ選択します。オーソドックスですが、私は『羅生門』を使うことにしています。指導時間は「6時間」です。

 ② OS1のレベルとステップを決める

 OS1は『論理エンジン』を指導していくうえで最も重要な1冊です。特に『論理エンジン』は導入期の指導が最重要ですので、そこには十分な時間を取ります。
 今回の計画では「12時間」です。
 すべてのレベルとすべてのステップを12時間で「指導」することは難しいと思います。(問題を解かせて答え合わせをするだけなら可能です。しかしそれは「指導」ではありません。)
 この部分については、私が「これが良い」「これが悪い」ということができません。なぜなら(これもこのブログで何回か書かせていただいたように)それが生徒によって大きく異なることであり、指導する教師の考え方によっても大きく異なるからです。
 逆に言えば、自分の指導の特色が最も発揮できる部分ということになります。いろいろな指導場面を具体的にイメージしながらピックアップしてください。

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今回もかなり長くなってしまいましたので、ここでひと休みします。