今年度3回目の授業力向上セミナーです。
 今回も関東だけでなく、北陸、関西、九州と多くの地域からご参加いただきました。
 毎回ご参加くださる先生も多くいらっしゃり、気を引き締めて準備してきました。

 今回のテーマは「試験問題に活かす『論理エンジン』」です。

 「論理エンジン」は「論理」に集中して学習ができるように、課題文にはきわめて平易な内容のものが用いられています。そのため、学習している生徒はもちろん、指導している先生方も
「こんな優しい文章ばかりで、果たして力がつくのか」という疑問を持ってしまいます。
 たしかに「論理エンジン」だけでは、高校生レベルの文章の「内容」についての学習は不十分です。総合的な読解力や得点力を身につけるためには、相応の難易度と分量を持った文章を読み込んでいく必要があります。
 しかし、そのような読解力、得点力のベースとなる「知的基礎体力」がついていない状態で問題演習に時間を割いても、読解力、得点力が向上しないのも事実です。
 そこで、私は「論理エンジン」の指導段階に応じて、また生徒たちの習熟度に応じて、適切な演習課題(これは教科書でも構いません)を実践することを、セミナーや講演でお話をしてきました。
 その実践例をお見せすることが、今回のセミナーの目的です。


 今回のセミナーは大きく2パートに分けてあります。
 第1部は「論理エンジンン」の指導部分です。教材にはOS2L14とOS3L27を取り上げました。 OS2までで、基本となる3つの論理の学習が完了し、それらを用いたまとめ教材としてのL27という位置づけです。

 因果関係のオプション部分を確認した後、3つの論理を黒板で整理します。

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 次のパートでは比較的平易な内容で、分量としても1,200字程度の文章を課題文とした演習問題を取り上げます。
 とはいっても、いきなり演習問題を解き始めるわけではありません。
 
 日本語であっても外国語であっても、言語を扱ううえで4技能(読み、書き、聞き、話す)についてバランスよく習熟することは極めて重要です。(この観点に立ってもディベート学習ははとても優れたスタイルなのですが)
 にもかかわらず、国語の指導においては「聞くこと」が軽視されがちです。「聞く力」は「読む力」「話す力」の根本にあるにもかかわらずにです。
 私はこの「聞く力」を非常に重視しているので、「論理」の基本を学び終わったタイミングでディベートを行い、また問題演習においても「聞くこと」から入るようにしています。今回もそのスタイルで授業を行いました。

 はじめに生徒(セミナーでは先生方)には文章を配布せず、B4サイズの白紙を配布します。そして次のように指示をします。

 「これから私がみなさんに一つの話をします。今配った紙にメモを取りながら、私の話を聞いてください。メモの取り方は自由です。その紙をどのように使っても構いません。話し終わった後で、みなさんに次のことを聞きます。
 ① 私は何について話をしていましたか。つまり、私の話のテーマです。
 ② 私がみなさんに最も伝えたかったことはなんですか。つまり、私の主張です。
 今まで論理エンジンや思考ルートで学習してきたことは、いま一緒に整理しましたね。それらを十分に踏まえて、話を聞いてください。」

 そして私は課題文を読み始めます。文章は書き言葉で書かれていますので、その部分は話し言葉に変えて話します。また、聞いただけではイメージしにくい熟語などは黒板に書いたり、平易に言い換えたりしながら、話をします。

 英語ではあたりまえのようにリスニングに取り組んでいる生徒たちも、国語のリスニングとなるとほとんど経験がありません。先生方についても同様です。いずれにしても戸惑っている様子がありありとうかがえますが、話し始めてしまいます。
 
 一方で、生徒たちが慣れない段階では、話す(読む)側にはいろいろな工夫が必要です。話すスピードは言うまでもありませんが、例えば、生徒たちが「論理」を意識して話が聞けるように、接続語などはあえて強調して話したりします。「にもかかわらず」「~だから」「このようにして」「言い換えれば」など、論理構造を判断するために必要な言葉などは、それと気づくように話をするなどの工夫します。

 セミナーでは時間の関係で、先生方に先述の①②について発表していただくことはできませんでしたが、実際の教室では時間を取って発表させるようにします。慣れないうちはグループ学習で相互に発表させるのもよいと思います。
 (この「国語のリスニング」の教育効果については、また別の機会にお話しできればと考えています。)


 セミナーはここで休憩を取りました。休憩後は、読解へと移っていきます。