今回の名古屋研修会では、今までの研修会と同様に「『論理エンジン』の指導法」についての具体的なお話に加えて、以下の2点を盛り込んでの講演となりました。

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1つ目が「授業以外の場面における論理エンジン・メソッドの活用事例」です。

私が『論理エンジン』の指導を始めて間もなく10年になろうとしていますが、そもそも『論理エンジン』を自分の指導に取り入れようと考えたのは、国語(現代文)の学力を伸ばそうと考えたからではありません。
根本となった動機は「考える人間を育てたい」。これに尽きます。

人間は必ず言語によってものを考えます。したがってその言語がしっかり鍛えられていなければ、思考そのものが不確かなものとなってしまいます。
この、「言語を鍛える」過程は、本来であれば家庭での教育、そして学校教育が責任をもって担わなければならない部分なのですが、最近ではどうもそのあたりの「教育」があやふやになっている。私はそう感じずにはいられません。

学校教育力の低下を話題にすると、必ず「ゆとり教育の弊害」といった議論が顔を出しますが、「日本語力を鍛えられない学校教育」という点に焦点化すると、「ゆとり教育の弊害」どころではない、もっと大きな「教育の瑕疵」が、戦後から現在に至るまで全く解決されないままになっていると私は考えています。
(この話は、とても長くなってしまいますので、この辺で終わりにします。)

さて、そのような「私の思い」(=「考える人間を育てるために、日本語力を基礎から鍛えなおしたい」)を叶えるためにうってつけの教材だったのが『論理エンジン』だったわけです。

したがって、『論理エンジン』は、自分自身の国語教育に取り上げることはもちろん、開智高校で新しくスタートさせる類型(S類)の創造を任せていただいた際にも、そのSchool Identityの大きな柱として『論理エンジン』を位置づけました。
「考える人間を育てること」、これは私の教育理念そのものなのです。

また、『論理エンジン』が「言葉を鍛え、思考力を鍛える」教材である以上、その対象は生徒に限るものではありません。したがって、私は『論理エンジン』を使って校内での「教員研修」や「保護者向け講座」なども行ってきました。

今回の研修会では細かなところまでの紹介はできませんでしたが、取り上げさせていただいた実践報告は、日頃から直面なさっている自校の課題に照らして、多くの先生方から共感していただくことができたようです。

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2つ目は、この4月より教育現場に出した『思考ルート』の実践的な使用法についてです。

今までお話ししてきたように『論理エンジン』は「思考力を鍛える」教材です。思考力は人間活動の根本となるものなので、あらゆる教科学習においても、その根本に必要不可欠な力となります。
したがって(理想的には)思考力の鍛錬はすべての教科学習の場で行われるだけでなく、あらゆる教育の機会をとらえて実践されなければならないことなのですが、現実には国語、特に現代文の教科学習の場で中心的に取り組まれているのが実情です。

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ところが、『論理エンジン』を効果的に指導するためには相応の「指導者スキル」が必要ですので、多くの国語科教師が取り扱うにはややハードルが高く、このことが、多くの先生方が『論理エンジン』の持つ高い教育力を知りながらも実際の指導に踏み切れない原因となっています。
このハードルを越えやすくするために、私が開発した教材が『思考ルート』なのです。

『思考ルート』は多くの先生方が使用している「教科書」を使って『論理エンジン』の指導ができるようにした教材ですので、学習する生徒にとっても、指導する教師にとっても違和感なく『論理エンジン』メソッドを身につけることができるようになっています。

今回の研修会では、実際の教材を手にしていただきながら、指導のポイントなどを紹介させていただきました。
会場にはすでに『思考ルート』をお使いになっている先生方もいらっしゃいましたが、今回初めて『思考ルート』の実物教材を手にされる先生方もいらっしゃいましたので、その先生方にとっては、今までになかった「論理エンジンの切り口」を体験していただけた機会になったと思っております。

研修会終了後にも会場に残っていろいろ質問をしてくださった先生方が多くいらっしゃり、大変に嬉しく思いました。

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今回の研修会はやや内容が盛りだくさんであったこともあり、1つ1つの項目に割ける時間が短くなってしまったことが残念でしたが、いろいろな観点から興味を持っていただくことができたようです。また、2学期以降の授業見学のお申し出などもいくつも頂戴いたしました。

今回のような研修会を通して、教科にかかわりなく、多くの先生方に「言葉を鍛える」「思考力を鍛える」ことに興味を持っていただくことで、少しずつでも、現在の「ピンボケ教育」を「人材教育」に動かしていきたいと、私自身も思いを新たにさせていただくことができました。

今回参加してくださった多くの先生方をはじめ、「思考力育成」に日頃からそれぞれの現場で格闘なさっていらっしゃる先生方、今後とも、よろしくお願いいたします。