2018年07月

講座002(ディベート:大阪)

 今年度2回目のセミナーです。
 高大接続改革を前提として、「今ある授業をどう変えていくか」をテーマとして
プログラムしました。
 5月に行った東京セミナーとコンセプトは同じですが、今回までの約2ヶ月の間に
私が新しく取り組んでみた実践などを加えた内容です。

 セミナーは大きく3部で構成しました。
 第1部では高大接続改革の中での「学力の3要素」について目線合わせを行い、
その後、開智での教育コンセプトのお話をしました。
 第2部では、私の指導コンテンツである「マイコン」について、実際の生徒の学習シートや、
振り返りコメント、あるいは実際の発表VTRなどを見ていただきながら、教材のねらいや
指導プロセスをお話しました。

CIMG0712BlogPaint

BlogPaintBlogPaint

 また、今回私も初めて教材化してみた「『水の東西』のリスニング」について紹介しました。
『水の東西』は国語教師であればほとんどの教師が指導経験がある、いわゆる定番教材
です。高校1年次の説明的文章読解指導の導入教材として、文章構成がわかりやすく、
筆者の主張を論理的に捉えさせるのに適した教材といえます。
 今回の取り組みは、生徒たちがまだ教科書を見開く前の段階で『水の東西』を私が読み
聞かせ、そこでの聞き取りメモを頼りに、山崎さんの主張に迫らせてみるというものです。

 「これからみなさんにはひとつのお話を聞いてもらいます。話し手は山崎さんという方で、
そのお話を私が代読します。みなさんは配布されている用紙にメモを取りながら話を聞いて
ください。」

 その後は聞き取りメモを元に学習シートに取り組ませ、さらにグループごとにマインドマップ
を使って、『水の東西』の論理構成などを整理させます。そしてすべてのグループに発表を
行わせていきます。もちろん生徒たちは最後まで『水の東西』の文章に触れることはありません。
 セミナーでは生徒たちが作成した聞き取りメモや学習シート、そしてマインドマップを先生方に
見ていただきながら、指導効果についてお話しさせていただきました。

BlogPaintBlogPaint
BlogPaintBlogPaint

 第3部では、今回のセミナーテーマでもある「ディベート」を取り上げました。
 今回のセミナーには、まだ実際のディベート指導経験が無い先生も多数いらっしゃい
ますので、テキストを読めばわかる部分は割愛し、まず実際にディベートを体験していただくことを優先事項としました。
 その場で先生方をグループにわけ、「論題の定義」から実際に体験していただきました。
 また、模造紙と付箋とを使って、主張、論拠、質問事項などを6分割マトリクスに整理していくプロセスも体験していただきました。

BlogPaintBlogPaint
BlogPaintBlogPaint

 これらの体験を通して、一人ひとりの先生が、
「では、自分の学校で、自分が指導するときの留意点は何か。」
を明確にし、持ち帰っていただけたのではないかと感じています。

 5月の東京セミナー、6月の京都研修会、そして今回の大阪セミナーに参加してくださった
先生方が、2学期にどんな形であれ「自分の授業に挑戦」してくださることを、心より願って
おります。

授業010

1学期レギュラー授業の最終回です。
 今年度の1年生は高大接続の観点から、新しい指導プロセスにいろいろチャレンジしています。そのため年度当初の計画を大きく変更することも多く、何かと手探りの1学期間でした。
 その意味で今日の授業も新しい取り組みです。

 さて、今日のマイコンです。
 テーマは「サッカーワールドカップでの日本対ポーランドの試合について」です。
 内容の詳細は語らずとも、多くの方は推測がつくのではないでしょうか。
 発表者、コメンテーターともに日本の取った作戦については肯定的な意見が述べられたところで、私が少し口を挟みました。
 「今回発表された内容を全体としてPREPのEに位置づけたとき、Pは何になるだろうか」

 生徒たちが具体的な話題に偏って発言していたため(もちろん悪いことではありませんが)、あえて抽象化した視点にアプローチさせてみたかったのです。


 さて、マイコンの後は授業に入ります。
 今日の授業テーマ(めあて)は「頭を使っている感覚を実感する」。
 独自教材を使います。

 人間は目覚めている間は多かれ少なかれ「頭を使って」生活しているわけですが、常に頭を使っているからこそ、実感を伴って意図的に「頭を使っている」時間は意外に少ないのではないかというのが、私の考えです。
 学習課題や試験問題に取り組んでいるときでさえ、意図的に頭を使っていないかもしれません。いいかえれば「頭を使っているという実感を伴って頭を使って」いないかもしれないということでもあります。
 
 そこで今日の授業では一見すると「これが現代文の学習?」というような教材を使って、短い時間でよいから「頭を使っている」実感を生徒たちに感じてもらおうと考えました。

 たとえば哲学課題のようなもの・・・

 「天使と悪魔だけが存在するこの世界では、天使はつねに真実を述べ、悪魔はつねに
 ウソをつきます。」
 問 この世界においては「私は悪魔です。」という発言が存在し得ないことを
   論証しなさい。

 あるいは数学の問題のようなもの…

A君とB君の2人が動物園で、ある一種類の動物を一緒に見ました。二人はそれぞれ
自分が見た動物はキリンですと答えました。その動物園には17種類の動物が飼育され
ていて、そのうち一種類がキリンです。また、A君もB君も20%の確率でランダムに
ウソをつきます。」
 問 A君とB君とが一緒に見た動物がキリンであった確率を分数の形で答えなさい。

                (上記2問:参考文献13歳からの思考実験ノート』小野田博一著)


 このような課題を与えると生徒たちは興味を持って取り組みます。考え始めます。
 しかし、そのときの彼らが目指しているものは「正解」です。あると確信しているたった一つのゴールに向かって突き進み、自分の出した答えが「正解」と一致することが彼らにとっての価値です。そこには思考のプロセスを実感しようとする姿勢は、残念ながら見て取れません。
 したがって、この授業では、並列的な「認識」を直列に並べ替えるプロセスこそ「考えること=頭を使うこと」なのだということを実感させていきます。

 この授業の詳細は、改めてセミナーなどで報告させていただこうと思います。
プロフィール

2000年度より開智学園の教育理念を具現化するための新教育システムの構築に取り組み、2005年度に「S類」をスタートさせる。独自に開発した【S類メソッド】の柱の一つに『論理エンジン』を位置づけ、3つの力(論理的思考力、判断力、表現力)の総合体としての「智力」の育成に大きな成果を上げている。また、独自の理論に基づく「ソーシャル・スキルの育成」も人間力の向上に大きな効果をもたらしている。 趣味はギター。

カテゴリ