2018年05月

授業005

 今日は、先日行った中間考査の答案返却日でしたが、授業のスタートはいつもと変わらず「マイコン」からです。

 今回のテーマは「妊婦が殺害された場合、加害者は二人に対する殺人罪で裁かれるべきだ」というものでした。
 かなり重いテーマでしたが、コメンテーターも聴衆としての他の生徒たちも一生懸命にこのテーマについて思考を深めていました。
 コメンテーターは全員が発表者の考えを支持しました。また支持根拠もおおむね同じ視点です。すなわち「胎児であっても命ある存在である。したがって・・・」というわけです。
 この段階で「マイコン」を終わらせることもできましたが、今回はあえて「発表者の意見を否定するコメントを考えてみよう」と問いかけてみました。加えて「今回のマイコンテーマを少し一般化し、『胎児に人権はあるか』という視点を加えたら、肯定・否定の論理構成は変わるだろうか」と投げかけてみました。
 するとあっという間に議論の輪があちこちに生まれ、活発な話し合いが始まりました。時間にすると3分間程度しか取れませんでしたが、それでも「否定的見解を発表できるかな」と問いかけたところ数人が挙手をし、発表してくれました。詳細は割愛しますが、「胎児に基本的人権を認めた場合・・・」、「胎児にとっての生存権とは・・・」など、さまざまな切り口からの意見が発表されました。
 今日の「マイコン」は、「命」と「法」という、とても似ていて、全く異なるものを扱ったため、哲学的思考のようなものを、生徒たちは経験できたのではないかと、私は感じています。

 さて、「マイコン」の後はOSです。今日はレベル4を中心に学習を進めました。レベル4からは「一文の要点」がテーマとなります。
 前時までに学習した「述語→目的語→主語」のルートをおさらいし、まずは各自で課題に取り組みます。その後グループで話し合い、その結果を黒板に書き出し、論証を加えていきます。
 まだレベル4段階ではグループ間での相違はあまり見られませんが、「同じである理由」を考えることも学習になります。

 今日の授業は、ここでチャイムとなりました。

講座001(ディベート:東京)

 今年度の講演・セミナーが始まります。

 例年は「授業力向上セミナー」が年度最初の内容でしたが、今年度はディベートをメインテーマとした講座を新しく設定し、スタートしました。

 今年度の高等学校入学生より、「大学が入学生に求める能力」と「高校が3年間の教育を通して育む能力」とを今まで以上に密接に関連付けて、効果的に人材を育成していきましょうという取り組みが本格化します。
 その一つの具体的な形が大学入試改革であり、その改革の目玉を端的に言えば、「今までは数値化することが難しいと思われていた能力」を入学試験での判断材料として明確に位置づけましょう」ということになります。
 これにより、高校の教育現場でも指導法改革が進められており、たとえば国語科では今までその重要性は「なんとなく」認識されてはいたものの、実際の授業に組み込まれることが少なかった(効果的な授業を行うスキルを持った教師が少なかった)「ディベート」などが注目されるようになっています。
 このような背景があってか、今回の講座には想定人数を上回る先生方のお申し込みがありました。東京会場ということで、もちろん関東圏の先生方が中心となりますが、遠くは沖縄県から日帰りの強行軍で参加された先生方もいらっしゃいました。

 さて、講座の内容ですが、大きく以下のような3部構成としました。

 ① 高大接続の整理と共有
 ② 開智高校での私の実践(1)「マイコン」
 ③ 開智高校での私の実践(2)「ディベート」

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 「マイコン」の講義では、参加された先生方に生徒になってもらい、実際に「マイコン」を体験していただきました。

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 その後で、私の授業の映像をご覧いただきながら、指導のポイントをお話しました。

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 また「ディベート」の講義では、テキストとして私が書かせていただいたテキスト(水王舎刊)を使用し、実際の授業の映像2本を使ってお話をしました。

 ディベートについては、指導者側が抱える課題がいくつかあると私は考えています。
たとえば、
  ・教師自身にディベートの実体験がない。
  ・ディベートの指導している(したつもりでいる)が実はディスカッションの指導である。
  ・ディベートマッチを上手に行わせることを指導のゴールに設定している。
などが挙げられます。
 学校教育(国語教育)の中でのディベートの位置づけを指導者一人ひとりが的確におこなえていること、加えて、目の前の生徒をどのように伸ばしていくかのイメージができていることなど、ディベートを効果に教材化するためには、クリアすべき課題がたくさんあります。


 あっという間の3時間の講座となりました。
 参加していただいた先生方、お疲れ様でした。今回の講座が先生方の授業にわずかでも良い影響を与えることができれば、これほどうれしいことはありません。
 これからも情報を交換しながら、より良い授業実践に切磋琢磨していきましょう。

授業004

今回も写真なしです。

早速マイコン。
今回のテーマは「歩行者用信号の押しボタン」についてです。

発表者は「押しボタン式の信号機は不要である」との論調です。
その論拠として挙げられたのが、
・押しボタン式と気づかずに渡るタイミングを逃すことがある。
・そもそもこのようなシステムにコストを掛ける必要性を感じない。
の2点でした。

この主張に対してコメンテーター(3名)からは、3通りのコメントがつけられました。
①主張を支持する。
②主張を支持しない。
③主張の部分的な支持。

そもそも信号機は、自動車や歩行者の通行量に基づいて設置されており、その計算された間隔で進行と停止とが制御されている。押しボタン式の信号機が渋滞の原因になってしまうことも考えられ、不要だ。

押しボタン式信号は「そのほうが良い」から考え出されたものだ。車椅子を利用している人や目の不自由な人などにとっては、ある程度自分のタイミングで横断できる押しボタン式信号は無くてはならないものだろう。社会的な弱者がより暮らしやすい環境を担っているものだといえる。

・・・など、いろいろな面からのコメントがありました。

押しボタン式信号は、私の通勤経路にも複数ありますが、思考テーマにすることも無く、生活していました。しかし、改めて考えてみれば、
・なぜこの場所に押しボタン式信号が必要なのか。
・誰が「必要」と判断したのか。
・設置前と設置後とで何が、どのように変化したのか。
など、知りたいことや考えてみたいことがたくさん思い浮かびます。
今日のマイコンで気づかせてもらえました。
そのような私のコメントを添えて、マイコンは終了しました。

続いてはOSです。
レベル1の確認を進めているところですが、その前に少し「口語文法」で確認しておきたいことがあったので、それについて生徒とやり取りをしているうちに、予定以上の時間を使ってしまい、さらには、そこから派生した話題で授業を終えることになってしまいました。生徒のみなさんには申し訳ない授業となってしまいました。

来週は中間考査のため授業はありません。
みんな、試験がんばれ!


授業003

連休狭間の授業です。
(デジカメを持って帰ってくるのを忘れたので、今回は写真なしです。)

 今日のマイコンテーマは「TOKIOのメンバーによる強制わいせつ事件」。
 一連の事件の中でフォーカスされたのは「飲酒」でした。
 報道によれば、加害者は過度な飲酒により1ヶ月にも及ぶ入院生活をし、やった退院できた矢先に、また懲りもせずに大量の飲酒をして事件を起こしたとのこと。発表者はこの点を指摘して過剰な飲酒がもたらす悲惨な結果を例に挙げながら、節度ある飲酒の大切さを論じました。
 3人のコメンテーターも発表者の意見に対して肯定コメントを立てる結果となりました。
 そこで私からクラス全体に向けて、「これだけ飲酒がもたらす害についての意見が出たわけだから、いっそのこと日本では飲酒を法律で全面的に禁止すべきではないのか。」と問いかけてみました。結果は31名中2名が「肯定」、29名は「否定」でした。
 肯定した2名(男女各1名)の意見は
 ・飲酒が原因で引き起こされる犯罪がある。その原因も明確である。そうであるなら原因は取り除くべき。
との趣旨であり、否定派の意見には
 ・飲酒は文化の一つであり、それがもたらすプラスの面も評価すべきである。
との趣旨が多く見られました。
 今日のマイコン・テーマはディベータブルであったため、もう少し掘り下げたかったのですが、時間も限られているので、双方の意見を発表したところで終了としました。

 そしてやっと今日からOSに入ります。
 前回の授業で取り上げた「言語」「認識」「コミュニケーション」の関係性を整理し、特にコミュニケーションの領域で重要になる「論理」へとつなげていきました。
 このあたりの内容はOS1のプロローグを使って確認し、そのうえで「Lv1」に入ります。

 OS1の「学びポイント」は「一文」です。特に前半のレベルでは一文の要点を中心に確認していきます。
 国語を「意図せず」「自然に」「成り行きの中で」身につけてきた生徒たちは、自分自身の「日本語力」の、どこに「穴」があるかを自覚していません。その「穴」の発見が授業後半の「めあて」となります。

 今日の授業ではSt6までがやっとでした。
 次回の授業では本時の学びあいの結果を共有していきます。

プロフィール

2000年度より開智学園の教育理念を具現化するための新教育システムの構築に取り組み、2005年度に「S類」をスタートさせる。独自に開発した【S類メソッド】の柱の一つに『論理エンジン』を位置づけ、3つの力(論理的思考力、判断力、表現力)の総合体としての「智力」の育成に大きな成果を上げている。また、独自の理論に基づく「ソーシャル・スキルの育成」も人間力の向上に大きな効果をもたらしている。 趣味はギター。

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