マイコンが終わり、授業の本体へと進みます。
私の授業の年間コンセプトは
「論理的な思考力・判断力・表現力を高める」
ことにありますので、授業のスタイルも一般的な国語の授業とは大きく異なります。
本時の「めあて」は、【「言語」「認識」「コミュニケーション」を定義しよう。】です。
・生徒一人ひとりに簡単なワークシート(A4版)を1枚ずつ配布します。
・班ごとに定義する言葉を割り振ります。
→ 生徒たちは4人で1班となっており、クラス全体で8班の構成になっています。
・制限時間15分で、それぞれの言葉の定義を作り上げます。
→ もちろん辞書などを使ってはいけません。
高校生ともなれば、今回取り上げた言葉そのものを知らないということはありません。日常生活の中で頻出するというレベルではありませんが、いろいろな授業の中ではよく使われる言葉です。おそらくその言葉のもつ意味もわかって使っているのでしょう。
にもかかわらず改めて「定義しよう」ということになると、とたんに「わからなく」なる。
本時の学習では、これら3つの言葉の定義を通して、これからの1年間の学びのルートに気づいてもらうことを主眼としていますが、一方で、「定義することの大切さ」にも気づいてもらいたいと考えていました。
言葉に限らず「定義できること」あるいは「定義しようとする姿勢を持っていること」は大切な能力です。そのことの意味を実体験してもらいたいとも考えています。
私がグループ学習(協働的学び)を行う際に心がけていることがいくつかあります。
たとえば、
① 時間を区切ること。やや短いかなと思う幅で区切ります。
② その時間の成果を必ずみんなの前で披露させること。
・もちろんすべての披露に対し、私が即座に評価を与えること。
③ (グループ学習をさせる教師として)
話し合っている生徒が、「見た目アクティブ」なのか、「主体的アクティブ」なのかを
見極めること。
などです。(各項目の意図については、別な機会に触れたいと思います。)
各グループを回り、声を掛けていきます。
配布されたワークシートがきれいなままの生徒もいます。「正解」で示されたら書こうとしているのかもしれません。
ワークシートには自分の「思考」の軌跡(思考ルート)を残すことを改めて指示します。
時間が来たら、各班の代表者は黒板に話し合いの内容を書き出していきます。
すべての班が黒板に書き終えたところで、今度は口頭での補足説明を求めて行きます。
そこで出てきた情報は、私が黒板に書き加えていきます。
黒板がこのような状態になります。ここでのポイントは「整理した板書にしない」ことです。
本校に入学してくる多くの生徒たちは相変わらず「たった一つの正解」にたどり着く教育を受けさせられてきています。「たった一つの正解」があると信じ、その「正解を覚える」ことに価値を見出している生徒さえいます。待ってさえいれば、いずれ誰かが「正解」を指示してくれるので、それをきれいに書き写し、しっかり覚えればよい。それが最も効率的な学習だと考えているのかもしれません。(恐ろしいことですが。)
このような指導を受けてきた生徒たちは、「自分の頭で考えなさい」といわれたところで、そのことの意味や重要性はわかるとしても、具体的にどう頭を使えばいいのかがわからない。したがって「頭の使い方」をいろいろな場面を設定して具体的に体験させる必要があります。その体験がこの黒板にあります。
この黒板のように「なんとなくカテゴライズされているが実に雑多な状態である情報」を整理し記述していくこと。各情報についてわかりやすく記述すること。情報相互の関係を見極めていくこと、(イコール、因果、対立・・・)そのような体験を積んでいきます。
もちろんまだまだうまくできない生徒がほとんどです。しかし、それらの生徒が1年後には見違えるようにうまくまとめられるようになります。
そのための学習=『論理エンジン』は来週から始まります。

2018年04月
今回の授業から、実質的にマイコンが始まります。
今日のマイコンテーマは「セクハラ」。財務省の官僚の問題などホットなテーマです。
しかし、今日の発表者の着眼点はセクハラそのものではなく、その報道のあり方についてでした。
セクハラについては論じるまでも無く絶対ダメであるとの主張の後、一方で最近の政治に関する報道については、その多くの分量をセクハラが占めている点を問題として提起しました。さらに報道そのものが本質的にはバイアスがかかっていることを指摘した上で、本来報道が国民に知らせるべきことはほかにもある、それらを具体的に挙げ、まとめとしていました。
PREPを強く意識した発表となっていて、早速前回の学習内容を具体的に実践した姿勢は非常に高く評価できます。
この主張に対し、3人のコメンテーターからは「支持」のコメントが出されました。(内容割愛)
今回は全員が同じ方向性を持った見解だったので、私からは全員に対して「不支持」の意見を構築してみることを提案しました。
まだグループには机を移動させていませんが自然と前後左右で話し合いが広がっていきます。
その後2つの班を指名し、「不支持」の見解を発表してもらいました。
マイコンのまとめとして「ハラスメント」は絶対悪であることを確認したうえで、最近の風潮としての「~ハラ」の乱発について考えてみようと提案し、終了としました。
(本時の続きは次回へ)
初回ということで、水王舎の方がVTRを撮影に見えました。
毎年のことですが、授業初回は私の授業を受けるにあたっての「お作法」を
知ってもらうことから始まります。
あわせて、この授業が目標としていることについてもクラス全体で共有していきます。

次に、私の授業の約40%を構成している「マイコン」について説明します。
「マイコン」とは、毎週1回行われる授業に参加するにあたり、、すべての生徒が一つずつ
何らかの発表テーマを準備してくるという学習スタイルです。
各授業で発表するのはたった一人ですが、発表者はその場の抽選で決定するため、
すべての生徒が準備しなければなりません。
また、発表者になった生徒と同じグループの生徒は「コメンテーター」として、
その発表に対するコメントを述べなければなりません。
それらの発表とコメントを聞いている大多数の生徒たちは、「聴衆」として、目の前で
繰り広げられる発表とコメントについてクリティカルな判断をする姿勢が求められる・・・。
これが「マイコン」です。
(※「マイコン』に興味がおありの先生方は、ぜひセミナーにお越しください。
今年度初回のセミナーは「マイコン」と「ディベート」をテーマとして5月20日(日)に
東京(半蔵門)で実施します。詳細は水王舎の案内をご覧ください。)
一通りの説明が終了したところで、私の授業スタイル(学びあい)に机を並べ替えます。
今日の授業では生徒たちに「マイコン」の準備がありませんので、この場で考えてもらい
ます。時間は10分間です。




一通り自分の「マイコン」が設定できたところで、ここまでの学びのツボを整理します。

まだまだこの段階では生徒たちは「マイコン」のイメージがつかめていません。しかし、
「マイコン」学習で大切なのは「説明を受ける」ことではなく、「主体的に動く」ことなので
まずは実践です。
抽選で選ばれた生徒と、その仲間たちがいきなり前に出され、発表とコメントを行います。




さらに、発表を聴いていた「聴衆」にも、批評が求められます。

このような「練習マイコン」を今日の授業では数回行いました。
どの生徒の取り組みも、私の予想をはるかに上回るクオリティであり、これからの
授業がとても楽しみになりました。

次回の授業からは、本格的に「マイコン」(1st stage)が始まります。
また『論理エンジン』OS1にも入ります。
今年度は宿舎規模の都合で長野県の菅平と千葉県の勝浦とに分かれての実施です。
高校では新入生を迎えるとまもなく、新入生を対象としたガイダンス合宿を行うことが
多いのですが、開智では全学年で合宿を行います。それがこのセミナーです。
3年生は勉強合宿プログラムになりますが、1・2年生は新学年での生活に向けた
ガイダンスプログラムが中心です。
開智高校は生徒が中心となって学校生活を創り上げていく学校ですので、このセミナーで
行われる新歓プログラムなども、すべて2年生の生徒たちが企画・運営していきます。
また1年生ではセミナーの中心的なイベントとしてディベートを行います。各クラスで
ディベートに取り組み、それぞれの代表チームがセミナー最終日に公開ディベートを行います。
毎年いろいろなカラーのディベーターが登場するので、非常に楽しみな企画です。
(勝浦:教室からの眺望)


2000年度より開智学園の教育理念を具現化するための新教育システムの構築に取り組み、2005年度に「S類」をスタートさせる。独自に開発した【S類メソッド】の柱の一つに『論理エンジン』を位置づけ、3つの力(論理的思考力、判断力、表現力)の総合体としての「智力」の育成に大きな成果を上げている。また、独自の理論に基づく「ソーシャル・スキルの育成」も人間力の向上に大きな効果をもたらしている。 趣味はギター。