2016年07月

授業力向上セミナー

 今年度の授業力向上セミナーを、7月23日(土)に行いました。

 このセミナーは、昨年度までは年に数回、東京と大阪で日曜日に実施してきましたが、
セミナー後のアンケートで毎回「開智高校の授業を見てみたい」とのご要望を頂戴しており、
今回初めて授業参観を取り入れたセミナーを実施することにいたしました。
 しかし実際の授業を見ていただくとなると、日曜日に実施するわけにはいきません。
また、生徒達に余分な負担をかけるわけにもいきませんので、今回は夏期講習の午後を
使って1コマだけ生徒たちに残ってもらい、授業を行いました。
 どこの学校も夏休みに入って最初の土曜日ということで、本校と同じく夏期講習を行って
いたり、部活動の練習や合宿が始まっており、ご参加いただいた先生は今までのセミナーの
三分の一程度となってしまいました。
 そのような多忙期にもかかわらず、本州はもちろん、北海道、九州、四国からもご参加
いただき、約20名でセミナーをスタートさせました。

【第1部】 OS1での指導ポイントの共有

 多くの先生方は1学期にOS1の指導をしてこられています。そこで最初の取り組みは
「各自の指導経験を共有する」ことにしました。

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 OS1では『論理エンジン』という教材の特徴をしっかりと理解させ、学びの目的を
生徒が自覚できるようにすることが重要です。それらの点について、実際にOS1を
使いながら私が模擬授業を行い、今グループで話し合っていただいた内容を、検証
整理していただきました。

【第2部】 授業参観

 ここではOS2の授業を行いました。接続詞のレベルです。
 授業なのでいつもどおり「マイコン」でスタートします。今回取り上げられたテーマは
「ポケモンGO」。予想していたとはいえ、あまりにドンピシャです。教室全体も「やっぱり
なー」という雰囲気に包まれました。
 しかし、主張もさることながらコメンテーターのコメントが非常に多面的で驚かされました。
プラス面とマイナス面とを整然と整理した生徒もいれば、経済波及効果について自論を
展開する生徒もおり、参観されている先生方にとっても見ごたえのある発表になったので
はないかと、少し誇らしげな気持ちになりました。

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 実際の授業は『思考ルート』で接続表現について整理した後、レベル12のステップを
取り上げながら進めていきます。『論理エンジン』に入ってからは学びあいスタイルとなり
ますので、参観の先生方にもどんどん生徒の中に入っていただき、開智の学びあいを
体験的にご覧いただきました。

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【第3部】 授業参観の振り返りと、これからの指導の課題の共有

 授業を受けて、各先生方の指導の実際との相違点や共通点などをお考えいただき、
それをグループで共有していきます。

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 そして、その内容をホワイトボードに書き出していただきました。

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 各項目について、全員で意見交換しながら、私の見解も述べさせていただきます。

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 このような流れで、今回のセミナーは終了いたしました。

 遠方から日帰りでの参加を余儀なくされた先生や、夜行バスでいらっしゃった先生など、
かなりの強行軍でご参加いただいた先生が多いセミナーでしたが、先生方のご期待に
沿えるセミナーとなったか、いささか心配です。
 また今年度は2学期にうまく日程を取ることができないことから、本セミナーは今回が
最初で最後となります。
 ご質問等につきましては個別に承りますので、ご遠慮なくお寄せ下さい。
 またセミナー以外の機会で先生方にお目にかかれることを楽しみにしております。

 最後に、夏休み中であるにもかかわらず授業に参加し、素晴らしい取り組みをみせて
くれた生徒のみなさんに心から感謝します。
 ありがとうございました。

保護者講座(第1回)

 7月9日(土)、今年度第1回の保護者講座を行いました。

 この講座もスタートから8年目になります。
 扱うテーマも当初のものから少しずつ変化しており、ここ数年は

 「大人に効く思考力・試行力講座」

と銘打って行っています。講座の柱は「親子のコミュニケーション」。
それを再構築あるいは進化させるために「親自身」の言語スキルを再点検するところから講座がスタートします。

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 講座の途中では『論理エンジン』OS1の問題を資料に用いて、保護者のみなさまにも
学生時代に戻ったつもりで勉強してもらう場面も作ったりします。

 親子のコミュニケーションのケーススタディでは思い当たる場面も多いようで、会場は
笑いに包まれます。初対面の隣席の方とも、「そう、そう、うちも」といった様子で、自然に
打ち解けていくことができるようです。

 今回の講座のまとめは、「言わねばわからない親になりましょう」

 なかなか難しい「実践」です。

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 この講座は先着順でお申し込みを受け付けるのですが、会場の関係で100名弱しか
お受けすることができません。そのため、ありがたいことなのですが、毎回申込受付の
翌日にはほぼ満席となってしまいます。今回も翌々日申し込み分で定数超過となり、
この日の受け付け分は抽選となってしまいました。結果的に約30名の方にはキャンセル
待ちに回っていただく事になりました。キャンセル待ちとはいっても結果的には2席しか
キャンセルが出ず、お待ちいただいた保護者のみなさまには大変に申し訳ない結果と
なってしまいました。

 人数だけを考えれば、体育館やホールで行うのが良いとは思いますが、この講座の
ねらいは、単に話を聞いていただくだけでは達成できません。今後も現状規模で開催して
いくつもりです。

 今年度第2回講座は11月下旬に計画しています。次回講座は保護者のみなさまが職場でも役に立てられるような内容にしようと計画しています。
 

7月5日

「第10回」 7月5日 3・4時間目(通算第19・20回)

教材:教科書

 (1)マイコンの発表とコメント

    今回のテーマは、「旧石器時代の人骨が、沖縄県で大量に発見された。」でした。
   ばらばらにならずに、元の姿にほぼ近い形で発見されたものもあり、歴史的にも価値ある
   発見なのだそうです。発表者からは「こういう発見を通して逆に現代を見つめなおすことが
   できる。」との意見が披露されました。
    コメンテーターからは、大昔の情報が明らかになることで歴史という「つながり」を感じる
   ことができる、わからないことが明らかになり、教科書の内容もよりよいものになる、など、
   歴史的な価値について意見が出される一方で、
     ・地球の磁場は、かつては逆転していた。
     ・千葉県には大昔を知ることができる断層がある
   などの話が出され、これらも昔の出来事を創造したり、身近で観察できたりする例であり、
   今回の人骨発見とあわせて、新たな歴史認識の可能性につながるといったコメントも
   発表されました。

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 (2)『羅生門』

    13段落以降を「人物+場面=心情」の思考ルートに従って読み進めていきます。
    今回の「めあて」は、いわゆる従来型の小説文の読み取りではなく、思考ルートの
   お作法を実践を通して身につけることにありますので、そこに焦点化します。
    学習に流れはテキスト『思考ルート』に沿って行いますが、今回は時間的な余裕が
   ありません。そこで私が『思考ルート』を書くにあたって特に重点を置いたポイントに
   絞って学習を進めました。

    ・大きな場面は明確に分けられる。それをもれなくチェックする。
    ・大きな場面の中での「行動描写」に着目し、小さな場面の「転換」ポイントを
     おさえる。
    ・会話文と行動描写から心情を言語化する。

(3)『羅生門』のテーマとディベート … グループ学習

    この作品で作者が描き出そうとしていたテーマのうち、
     「生きるための悪は許される」
    を取り上げ、肯定・否定の各立場から立論を作ります。

    ※実際にディベートマッチを行うわけではありません。ディベートの体裁を借りる
     ことによって、より緻密に、そして論理的に『羅生門』の世界にアプローチさせる
     ことが狙いです。

     取り上げたテーマもわかりやすく、ディベートにも興味を持っている集団ですので、
    生徒たちはすぐに生き生きと話し合いを始めます。
     ところがまもなく拡散する話し合いが行われてしまっていることに気づく生徒が
    出てきます。狙い通りの展開です。
     話し合いが拡散する原因を問いかけると的確な回答が返ってきます。すなわち、
      「テーマが定義されていない」
    といった回答です。

     「生きる」 … 生命体として生きるということか、人間として最低限度の生活が
              維持できているということか、あるいは…
     「悪」 … どの程度の悪か、法律的判断なのか、道徳的判断なのか、例えば善悪
           の判断といった時の悪はそもそも相対的な価値なのでは。
     「許される」 … 何をもって、あるいは何によって許されると考えるのか。これもやはり
               主観的かつ相対的なものなのではないか。

     生徒たちとのやり取りの中から、概ね以上のような観点が取り出されました。そして
    これらを定義していくにあたっては、例えば作品世界の中で定義するのか、作者が
    作品を著した時代背景の中で定義するのか、あるいは現代の私たちの価値観の中で
    定義するのか、そういった観点も不可欠であることをクラスで共有していきました。

     今回は、残念ながらここで時間切れです。当初の構想ではこれらの「価値(観)」を
    論理的に言語で構成するところまで進みたかったのですが、間に合いませんでした。
     2学期にはまた違ったテーマを取り上げ、今度はディベートマッチを前提として生徒たち
    の思考力を育てていきたいと考えています。
プロフィール

2000年度より開智学園の教育理念を具現化するための新教育システムの構築に取り組み、2005年度に「S類」をスタートさせる。独自に開発した【S類メソッド】の柱の一つに『論理エンジン』を位置づけ、3つの力(論理的思考力、判断力、表現力)の総合体としての「智力」の育成に大きな成果を上げている。また、独自の理論に基づく「ソーシャル・スキルの育成」も人間力の向上に大きな効果をもたらしている。 趣味はギター。

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