2016年06月

6月28日


「第9回」 6月28日 3・4時間目(通算第17・18回)

教材:教科書

 (1)マイコンの発表とコメント

    今回のテーマは、「イギリスの国民投票、EUからの離脱について」です。
    世代別の支持・不支持のデータを示し、高齢者層は離脱傾向が、低年齢層は残留傾向
   が強いことが述べられました。
    高齢世代はEUに参加していなかった頃のイギリスについての印象がより強く、伝統と
   誇りを重んじているという面も語られました。
    コメンテーターからは経済面での課題などが挙げられるとともに、国民投票の結果が
   離脱となった、つまり高齢者層の意見が通ったことを受け、「国家の担い手として、もっと
   若い世代の意見が重視されるべきだ」「若い世代の中には投票に行かなかった人が
   多かったのではないか」などの意見が出されました。

   BlogPaint


(2)「羅生門」

    時間がない中ですが、新しい単元に入ります。
    小説については「論理的に読解できない」と思い込んでいる生徒もいることが想定され、
   かつ「読解」と「鑑賞」との区別ができていない生徒も多いと思われるので、導入には
   『思考ルート』を用いて、「小説文の読解」のお作法を教えていきます。

    人物 + 場面 → 心情

    その上で、論理的に小説文を読んでいくとは、「場合分け」と描写チェックであることを
   確認し、早速本文に入りました。

    形式段落10での場面転換をおさえ、13段落まで呼んだところで、時間になりました。

6月21日

「第8回」 6月21日 3・4時間目(通算第15・16回)

教材:教科書

 (1)マイコンの発表とコメント

    今回のテーマは、「自動車技術に生かされるAI」です。最近の自動車には衝突回避など
   の安全技術だけでなく、自動運転システムなどを装備することも実用化の段階に入ってい
   ることが取り上げられました。そしてそこには人工知能が使われており、人工知能の発達
   が交通事故の減少に寄与するだけではなく、例えば高齢ドライバーをサポートすることで
   交通弱者の減少にもつながるのではないかとの視点も示されました。
    コメンテーターからは主張を支持する発言がある一方で、人間にも機械にも、そして人
   工知能にも当然誤作動にリスクがあるとの指摘もなされました。便利さの裏にある危険性
   を正しく認識し、その上で使用していくための啓蒙が重要だとの視点です。
    私からは、日本誤変換システムが作られ、進化してきたプロセスなどを紹介し、AI先進
   国ともいわれる日本の技術について考えてもらいました。

       BlogPaintBlogPaint


(2) 「〇〇の東西」

    前時からのグループワークです。1コマ扱いで終了する計画でしたが、各グループとも
   活発に話し合いをしているため、2コマ扱いに拡大しました。
    指導の詳細は割愛し、生徒達が黒板で発表した1次案をお披露目して終わりとします。
   (加工していないため、見にくくて申し訳ありません。)

    BlogPaint

    DSC00945DSC00944
   
    DSC00947DSC00946
    
    DSC00948

6月14日

「第7回」 6月14日 3・4時間目(通算第13・14回)

教材:教科書

 (1)マイコンの発表とコメント

    今回のテーマは、「舛添東京都知事の政治資金をめぐる公私混同問題」が取り上げられ
   ました。発表者の主張内容も、コメンテーターからのコメントも知事を擁護する観点は出て
   来ることはありませんでした。
    特に生徒達が主張していたのは、リオあるいは東京オリンピックを持ち出して、自らに
   対する不信任決議案の提出を待って欲しいと訴えた舛添知事の姿勢についてでした。

    BlogPaintBlogPaint

    現在、高等学校では18歳選挙権にかかわって、学年を問わずいろいろな切り口からの
   公民教育がなされています。今回の問題、今日のマイコンをきっかけとして、まもなく有権
   者になる自分という視点にまで生徒自身が自分の力で踏み込んでいけるよう、いろいろな
   議論をさせていきたいと感じさせられました。


(2)水の東西

    前回の続きで、第8段落の要約から入ります。
    
    前回のグループ発表では、4文目
     「日本人にとって水は自然に流れる姿が美しいのであり、~ 造形する対象では
      なかったのであろう。」
   をどのようにまとめていくかについて意見が分かれています。すなわち
     「水は自然に流れる姿が美しい」と
     「(水は)造形する対象ではなかった。」
   の関係(論理)をどう表現するかについての差異です。
    特段の意図もなく、感覚的にこの両者を因果関係で結んだり、逆接で結んだりした
   グループもありました。

    BlogPaint

    8段落の要約に続いて9~12段落までの要約を行い、最後に全文を踏まえて、
   PREPを再確認し、本単元の学習のまとめとしました。


(3)発展学習

    『水の東西』は「水」をテーマにし、東と西との対比構造の中から、東(日本)の文化、
   日本人の心を論ずる内容です。
    これを踏まえて、生徒達には「〇〇の東西」をグループで考えさせることにしました。
   〇〇にあてはめる事柄として適切なものを、自分たちで見つけるという、かなりハイ
   レベルなミッションです。

    最初は特にアドバイスも与えずに話し合いを始めさせました。話し合いには鳴れている
   ので活発に意見交換していますが、やはり1年生ということもあり、方向性を見出すことが
   困難な状態です。
    そこで、
     ① 具体的な対立事例から、共通項に迫る方法
     ② カテゴリを挙げて、その中で対立事項を見つけていく方法
     ③ マインドマップによるアプローチ
   などを紹介し、話し合いに取り入れさせていきます。

    BlogPaint

    今回の授業では30分程度しか時間が取れなかったため、続きは次回に持ち越します。

6月7日

 今日の授業は取材が入りました。新聞社系です。
 「アクティブラーニング」という大きなくくりの中で、私の授業が引っ掛かったようなのですが、そもそも私は(というより開智では)最近大流行の「アクティブラーニング」という取り組みはしていません。しいて言えば、今から20年以上前から実践し続けている「探究学習」や「学びあい」「教えあい」といった取り組みが、結果的にはアクティブラーニングに近いといった程度です。
 そういう事情から、今回のオファーの経緯が良くわからなかったのですが、今日お会いして腑に落ちました。実は取材チームの中に『論理エンジン』についてよくご存知の方がいらっしゃり、企画当初から「『論理エンジン』+「学びあい」」の記事を立てるということだったのだそうです。
 
 そういうことでしたら、授業によそ行きの服を着せる必要はありません。いつもの内容とテンポで授業をスタートしました。

******************************************************************************

「第6回」 6月7日 3・4時間目(通算第11・12回)

教材:教科書

 (1)マイコンの発表とコメント

    今回のテーマは、「大手コンビニが地域によって価格を変更する」というものでした。
   同じ商品でありながら、地域によって販売価格を変更するという戦略について、発表者は
   一定の理解を示しつつも、地域間格差の拡大や、かえって経済活動を停滞させてしまう
   のではないかといった懸念を表明していました、綿密なマーケティングにより立てられた
   戦略のデメリットを指摘した形です。

    これに対して今回のコメンテーターは3人とも批判的であり、コンビニ戦略を支持する
   意見が述べられていました。なかには「安いに越したことはない」といった、「自分に居住
   エリアは安く設定される」ことを前提として述べられたコメントもあり、やや荒削りな感じは
   ありましたが、前回のマイコンの反省が活かされ、「感想で終わる意見」は見られません
   でした。成長を感じます。

   BlogPaint


(2)「水の東西」 段落の要点をとらえる

   前半の50分で、前時にグループ発表が終わっている第3段落について、全員で議論
  します。
   〇段落の要点=文の要点の集合体 
   〇文の要点=-飾り
   〇文の要点のプライオリティを意識する
  などの学習ポイントを振り返りながら、全グループの要約案を検証します。特に「どの
  言葉を要点の中に残すのか」を意識させます。

   その後は第4~7段落までを使って
   〇対立事項→基準をそろえる
  などの基本的なお作法の学習を行い、流れを整理します。
   そして第8段落で、もう一度「段落の要点」をまとめる学習を取り入れました。
   まずは各自でまとめ、それをグループで相互発表します。今回のモデレーターはC席
  です。

   この段落は「日本人が噴水を作らなかったことについての、筆者の考え(1次主張)が
  述べられていますが、その「理由」の挙げ方に特徴があり、その部分をどのように要点に
  反映してくるかが、私の「楽しみポイント」です。

   BlogPaintBlogPaint

   BlogPaint

    取材のカメラがさまざまなアングルで生徒たちの学びの様子を撮影していますが、
   外部の方が授業にいたり、撮影されたりすることは、私の授業では日常茶飯事なので
   生徒たちも気にすることなく、話し合いを続けています。

    残り15分といったところですべてのグループの「要約案」が黒板に提示され、その
   一つ一つについて、全員で批判していきます。
    私の狙いとは違った部分の指摘も多く出されますが、それについてもスルーすること
   なく、すべて引き受けていきます。その分時間がかかりますが、これが私の授業スタイル
   ですから、そこは譲りません。生徒が一生懸命考え、述べた意見はどれも尊いものです。


    残念ながら、今回も途中で時間切れです。続きは来週。

  ***************************************************************************

    授業の後の取材では、生徒たちの活動についてきわめて高い評価をいただきました。
   今回来られた方は、全国で多くの学校のアクティブラーニングの取材を行っていらっしゃる
   そうですが、そのご経験の中でも、これほど生徒が生き生きと、そして濃密な話し合いや
   発表をしている学校は見たことがないとのことでした。
    お世辞半分としても生徒たちが褒められると悪い気はしません。
    
    記事が楽しみになってきました。

大阪研修会

久しぶりの大阪講演です。

授業力向上セミナーは、大阪でも毎年行っていますが、研修会での講演は数年ぶり
のような気がします。

今回の研修会も第1部は出口先生のご講演。
第2部を担当させていただきました。

DSC00918DSC00919

私の講演の目的は、『論理エンジン』を授業で使ってみたいという先生方に指導イメージを
具体的にお持ちいただくことにあります。

開智高校での導入経緯やその後発生した課題、そしてその解決プロセスなどをオープンに、
そして具体的にお話しするようにしています。
また、現在進行中の指導についても、資料を添えてお話ししています。

DSC00920DSC00921

今回の研修会には、関西、北陸の学校を中心に100名に近い数の先生方にご参加
いただきました。
公私比率は半々といったところ。大都市圏で開催した研修会でこれほど多くの公立高校が
参加なさるのは、今までにない現象であると思います。

主催の水王舎によれば、かなり早い段階で満席となってしまい、やむなく参加をお断りした
学校も数多くあったとのこと。個人的にも残念です。

******************************************************************************

『論理エンジン』は非常に汎用性の高い教材なので、裏を返せば、「自分の学校に合わせた
指導方法」を指導者が作っていく必要があります。
このことは、研修会の講演でもセミナーでも私が言い続けていることなのですが、(そのこと
だけが原因ではありませんが)最近では、学校個別の研修に呼ばれることが多くなりました。

セミナーや研修会で『論理エンジン』の指導方法や活用方法について大枠で理解したうえで、
学校の状況に合わせてそれをカスタマイズしていく学校がどんどん増えています。

全国レベルで見れば、今は「点」にすぎない現象ですが、今後、そう遠くはない時期に
その「点」が一気にネットワーク化する…。

かなり現実味を帯びた予感が、今の私にはあります。

5月31日

「第5回」 5月31日 3・4時間目(通算第9・10回)

教材:教科書

 (1)マイコンの発表とコメント

    今回のテーマは「歩きスマホ」。歩きスマホをしていて駅のホームから転落して
   しまった事故例を挙げながら、これほど危険な行為であるのに、なぜ止めることが
   できないのかという主張です。
    3人のコメンテーターからも発表者の主張を支持するコメントが出され、問題意識が
   共有されていることが確認されました。

   BlogPaintBlogPaint

     発表もコメントも、それ自体は理路整然と展開されていたので、とても分かりやすい
    ものだったのですが、特にコメントについてはその内容にかなり不満があったため、
    次のような投げかけをしました。

     「…で、君たちの主張は何?」

     発表者は自分が気になっているテーマについて問題を提起する役割なので、いわば
    「投げっぱなし」でも構わないのですが、コメンテーターはそれについて自分の考えを
    主張しなければなりません。にもかかわらず、今回のコメントのほとんどが「感想」
    あるいは「努力目標の提示」に過ぎなかったのです。
     提起されたテーマが、今までに自分が考えてもみなかった事柄であるならば「感想」
    を述べるだけでもやむを得ませんが、今回のように高校生である自分たちにとって
    極めて身近なテーマについて「感想」を述べるだけでは、あまりにお粗末です。
     小論文を書く際にも結論が「努力目標」で終わる文章は論文として認められないのと
    同様に、身近なテーマを取り上げたマイコンについても、小論文とは違い即答が求め
    られる点は割り引いたとしても、「感想」と「努力目標」では及第とは言えません。

     以上のような話をクラス全体に向けてした後で、主張(意見)構築の基礎となる
    解決のための「仮説」をクラス全体に問いかけました。

     「では、解決のための具体策として、何が考えられる?」
     「有効な解決策があるならば、それは既に実行に移されているだろうし、高校生が
    一瞬で思いつくようなことなどはスマホのメーカーの開発者や通信会社の人たちは
    とっくに思いついているだろう。つまり、正解などはどこにもない、そういったテーマに
    ついて頭を悩ませてみよう。」

      するとすぐにいくつもの意見が出されました。また出された意見についてすぐに
    その弱点が指摘されたりします。

     「歩くスピードを感知して画面がシャットダウンするようにしたらいい」
     「速度感知だと、電車の車内で座っていても使えないんじゃないか」
     「GPSと連動させれば…」

      いくつもの意見が出ますが、どの意見も同一側面からのものだけです。そこで
     次のように口を挟みます。

      「今、いろいろな考えが出てきたが、すべて切り口が同じことに気づいているか?」
      「その切り口とは何か?」

      今回のテーマは「歩きスマホ」。ここには少なくとも2つの観点が存在しています。
     すなわち「歩き」と「スマホ」の2つです。言い換えれば「使用する人間」にまつわる
     部分と、ハード面、「機器としてのスマホ」にまつわる部分です。そして生徒たちから
     出された意見のすべてが「ハードの改善」策でした。
      もちろんそのこと自体が悪いわけでは全くなく、出された意見も創造性に富んだもの
     が多くありました。しかし、私が生徒たちの話し合いを聞いている中で指導項目として
     設定したのが先述の点だったのです。

      1つ目は、思考課題について仮説を立てる際の「切り分け」(私の授業では、場合
     分けと表現します)の重要性を指導すること。
      もう1つは、今回「人間についての解決策」が提示されなかったことの意味を深く考え
     解析させること。
      この2点です。

      結局この後、これら2点について私も入って議論することで、1コマを費やしてしまい
     ました。

      BlogPaint

       その詳細を書いていると、どれほどの長さになるか想像もできないので、ここまで
     とします。


 (2)「水の東西」

    前回の授業の続きです。学習のめあては「段落の要点」をまとめること。

    この文章は一読でその内容がスッと頭に入ってくるので、中学校で指導されてきた学力
   でも、生徒たちはそれなりの「段落の要点」を作ってしまいます。
    しかしそれでは『論理エンジン』を学習している意味がありませんし、なにより子どもたち
   の思考力も表現力も、次のステージにステップアップしていくことができません。
    現在の学習で最も重要なのは、現在の学力の欠如部分を発見・認識し、それを『論理
   エンジン』のメソッドで確実に埋め合わせていくことです。そのためには、自分なりにまとめ
   た「段落の要点」について、そこに至る思考ルートを相互に発表し、確認していく学習が、
   最も効果的です。

   BlogPaintBlogPaint

    すべての形式段落についてこれらの作業を行っていくほど潤沢に時間があるわけでは
   ないので、グループ学習に取り上げる段落は私が指示をします。
    今回は第3段落を取り上げました。
    グループでの話し合いの結果、グループでまとめたものを黒板で発表します。そして、
   すべての班が作った「第3段落の要点」を比較しながら、さらに検討を進めていきます。

    今日の授業は前半のマイコンでかなり時間を使ったため、後半にそのしわ寄せがきて、
   ここで授業終了となりました。したがって、次回の授業はここから始まります。
プロフィール

2000年度より開智学園の教育理念を具現化するための新教育システムの構築に取り組み、2005年度に「S類」をスタートさせる。独自に開発した【S類メソッド】の柱の一つに『論理エンジン』を位置づけ、3つの力(論理的思考力、判断力、表現力)の総合体としての「智力」の育成に大きな成果を上げている。また、独自の理論に基づく「ソーシャル・スキルの育成」も人間力の向上に大きな効果をもたらしている。 趣味はギター。

カテゴリ