2016年05月

5月24日

「第4回」 5月24日 3・4時間目(通算第7・8回)

教材:中間考査、教科書

(1)マイコンの発表とコメント

   今回取り上げられたテーマは「日本人の航空機パイロット人数の不足」でした。
   発表者の観点は2つあります。
   1点目は、人数不足に伴い、運行の安全に対する信用が低下するということ
   2点目は、かつては「将来就きたい職業」ランキングで常に上位にあった
   パイロットが、いまや上位に入ってこないということ
   でした。
   1点目については、日本のパイロット試験は諸外国に比べて難しく、それゆえ
  資格を取得できる人間が少ないことも一因にはあるが、試験の質を落とすことに
  は反対であるとの立場でした。
   また2点目については、将来の職業とはすなわち「夢」そのものであるとの
  切り口から、最近の上位に「You Tuber」が入っていることを挙げ、子供の「夢」
  が大きく変わって来ている現状についての意見発表がありました。

   コメンテーターからは、例えば高速バスのドライバーの過重労働がもたらした
  悲惨な事故の例をもとに、多くの人命を預かる職業に就く人間の質と量について
  の意見が述べられたり、兄弟がたまたまパイロットを目指していた話などが披露
  され、聞き手側の生徒たちも引き込まれていました。

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    マイコン終了後は中間考査の返却、そして席替えを行い、新たな顔ぶれの
   グループで、1学期後半の授業がスタートしました。


(2)授業の流れ

   ① 教科書p『水の東西』
      
       『論理エンジン』OS1では原則として1文で学習をしています。
      また取り上げる文の内容も小学4年生レベルのものです。もちろんそこには
      「論理に集中させる」という意図があり、わざわざそのような文を『論理エン
      ジン』では取り上げているわけですが、それだけだと高校生は飽きてしまい
      ますから、適宜、年齢に合った文章を読みながら、その中で『論理エンジン』
      での学習事項を確認していくことが効果的です。

       この確認のための教材は教科書であっても、そうでなくても全く構いません。
      私の授業では大学入試問題を取り上げたり、面白いテーマを取り上げている
      新書を使ったりしています。

       今回は、いわば高校国語の定番教材である『水の東西』を取り上げることに
      しました。

 
   ② 全文通読

      ・各自で黙読します。時間は5分間程度と伝えておきます。
      ・「気になるところにはマークをしながら読みましょう」というアドバイスのみ、
       与えておきます。

   ③ 内容確認

      ・読み終わったところで、教科書を閉じさせ、あらかじめ配布しておいた
       罫線のみの用紙と筆記具を用意させます。
      ・以下の質問をし、それについての回答を用紙に書かせていきます。
        ・「この文章のテーマはなんでしたか。」
        ・「そのテーマについて、筆者は何を主張していましたか。」
        ・「自分の主張を印象的に伝えるために、筆者はどのような工夫を
         していましたか」
        ・「具体例として筆者は何を挙げていましたか。」

      ・この学習の狙いは2つです。
       1つは、自分の「メモリー活用度合い」を自覚することです。
       同じように文章を読んでいるように見えても、生徒の中にはたいてい
       以下の3パターンの生徒がいます。すなわち「眺めている」「読んで
       いる」「読解している」の3パターンです。自分がどのパターンなのか
       自覚させることが、今後の学習を効果的に進めるためには重要です。
       2つめは、「メモリーを活用すること」の重要性を自覚させることです。
       これはOS2の学習の橋渡しとなる事項です。

      ・せっかく全文を通読しましたので、メモだけをもとにして先ほどの発問
       項目についてクラス全体で意見を出し合い、まとめていきます。
       (展開の詳細は割愛します。)

    ④ OS1への落とし込み

      ・段落読みを通して、OS1での学習内容を確認させていきます。
      ・今回は第1段落まででチャイムになりました。

(3)まとめ

  ・本校の生徒の場合、従来型の指導ステップでの『水の東西』の学習は
   本時の学習をもって完了とすることができます。
  ・次回は第2段落以降について、「OS1」で学習した論理スキルを落としていく
   ことになります。

校内研修会(静岡)

 静岡県内にある私立中学高等学校の校内研修会にお招きいただきました。
進路指導に力を入れており、難関大学に多数の卒業生を送り出されている
学校ですが、一方で部活動をはじめとした特別活動にも、とても力を入れて
いらっしゃる学校で、活気にあふれています。
 生徒のみなさんのあいさつや身だしなみもしっかりとしていて、学ばせて
いただくことがたくさんありました。

 さて、今回の研修ですが、国語科の先生方を対象とした授業研究です。
特に『論理エンジン』の指導法について深めたいとの目的をお持ちで、
研究授業も取り入れた研修となりしました。


 最初に50分間の授業を拝見します。教材は『論理エンジン OS1 Lv4」、
高校1年生を対象とした授業です。
 1クラスの人数が40名超というサイズでしたので、開智で行っているような
「学びあい」形式ではなく、一斉指導形式での授業が展開されていきます。
 一斉指導形式では、どうしても生徒は受け身一辺倒の姿勢で授業を受け
がちですが、授業者の先生は、発問を工夫したり、指名回数を多くしたりするなど
して、生徒たちをどんどん授業に巻き込んでいかれており、充実した授業を
拝見することができました。


 授業後には会場を移して研究協議会です。

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 スクール形式で会場がセットされていましたので、お願いして学びあい形式に
していただきました。

 最初に授業者から授業の目的や自己評価をしていただき、それをもとにして
話し合いを始めます。

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 その中で出されたいくつかの点について、私から話をさせていただきました。

 こちらの学校は『論理エンジン』の指導歴が5年を超えていらっしゃるのですが、
今年度からさらに『論理エンジン』の指導効果をランクアップすることをお考えに
なっていらっしゃいます。そして、そのためには指導者のスキルアップが不可欠と
判断され、今回の研修となったようです。
 
 『論理エンジン』という教材は、「論理エンジン「を」教えることは非常にたやすい
ことであるが、論理エンジン「で」教えることは実に難しい」という特徴があります。
指導者が指導目的をしっかりと自覚し、それを実践していくスキルを持たなければ、
「で教える」ことは困難でしょう。
 協議会でも先生方のスキルをブラッシュアップするために、「目的」の確認作業
から、あえて入ることにしました。

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 そのうえで、研究授業の内容を取り上げながら、指導方法を話し合って行きました。

 ここでは、これ以上の具体的な内容をお話しすることはできませんが、予定時間を
30分以上超過してしまうほど、充実した時間を過ごさせていただくことができました。

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 研究授業を担当されたI先生、大変にお疲れ様でした。校務多忙の中での授業準備
教案作りは、身体的にも精神的にも大変な負担であったと拝察いたします。
 しかし、先生の授業があり、そして熱心な国語科の諸先生方がいらっしゃたからこそ
今回、このような研修ができたのだと考えています。そして、その場に私も同席させて
いただくことができましたことを、心より感謝申し上げます。

 最後になりましたが、今回の研修の企画・立案から実施に至るまで、多大なるご尽力を
いただきましたY先生に、心より御礼申し上げます。ありがとうございました。

5月10日

「第3回」 5月10日 3・4時間目(通算第5・6回)

教材:『思考ルート』『OS1』

(1)マイコンの発表とコメント

   今回取り上げられたテーマは「地球と火星との距離」でした。
   発表者によると、今日がまさに地球と火星との最接近日だそうで、この「最接近」
   というタイミングが持つ可能性と、今後の宇宙開発について語られました。

   コメンテーターからのコメントは、感想部分が多くはありましたが、自分なりの見解
   を述べようとする努力がみられ、なかなかの対応力でした。

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   マイコン終了後にクラス全員に対して、今回のテーマについて知っていた人が
   どれくらいいるか尋ねたところ、なんと0名でした。(私もその一員ですが)
   発表者は以前から宇宙について興味を持っているとのことで、今回の発表と
   なったとのことですが、コメンテーターは面食らったでしょう。
   しかし、興味がないがゆえに、おそらくは触れることがなかったであろう情報に
   多くの生徒が触れることができた…これもマイコンの魅力です。

(2)授業の流れ

   ① Lv4 St5~8
      ・文の要点=述語+主語を確認し、個人で取り組む。
      ・グループで思考ルートの相互発表。進行は指名されたモデレーター
       (今回はD席の生徒)

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      ・相互発表の途中で各グループに割り振られたStについて、グループで
       まとめた答えを黒板に書く。

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      ・各グループより、黒板に書いた解答についての思考ルートが発表され、
       それについて、聞いている他の生徒が評価をする。

      ★ このLvあたりでは、実はどの生徒も、グループもほぼ同じ答案となって
        います。したがってここでの指導ポイントは
        「答えが同じだから『いいでーす』で終わらせない」
        ということになります。
        小学校中学年レベルの国語の問題を高校生が解いているのだから、
        答えが揃って当たりまえ。そこで止まってしまったら、論理エンジンの
        学習は全く無意味なものとなります。
        そこにたどり着いた思考ルート、すなわち、わざわざ意図しなければ、
        なぜその答えになったのかを自覚することすら難しい、無意識レベルの
        思考ルートを言語化することにこそ、学習目的があります。
      
 
   ② Lv7 St1~4
      ・私の授業ではLv5とLv6は扱いませんので、Lv7にすすみます。
      ・ここは「即時解答」形式で行います。
      ・机間に入って、あたりの生徒をランダムに指名し、その場で答えさせます。
      ・焦ってしまって誤答する生徒もいますが、少し時間を与えれば自分で修正
       します。

      ★ この形式の授業で私が大切にしていることは、
        ・どんな答えでも、必ず拾い上げること。
        ・自分で修正できるまでは、決して許さない(次の生徒に移らない)こと。
        です。

(3)まとめ

  ・次週は中間考査になります。
  ・考査までたった3回の授業(50分換算では6回)しかありません。
  ・しかし、現代文の考査というのは記憶力を試す試験を行うわけではありませんから、
   考査を行うにあたって授業回数自体は大きな障害にはなりません。当然「試験範囲」
   なるものも、存在しません。
プロフィール

2000年度より開智学園の教育理念を具現化するための新教育システムの構築に取り組み、2005年度に「S類」をスタートさせる。独自に開発した【S類メソッド】の柱の一つに『論理エンジン』を位置づけ、3つの力(論理的思考力、判断力、表現力)の総合体としての「智力」の育成に大きな成果を上げている。また、独自の理論に基づく「ソーシャル・スキルの育成」も人間力の向上に大きな効果をもたらしている。 趣味はギター。

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