先日、関東にある大学付属高校の先生方が、授業見学にいらっしゃいました。
開智高校での学校改革の取り組みについて興味をお持ちになっており、あわせて論理エンジンの研修会にもご参加いただいている学校です。
今回のご訪問は国語科の先生だけでなく、英語科、数学科からも先生がお見えになりました。みなさんそれぞれ学校改革推進の主力メンバーで、校務分掌では指導的な役割を担っていらっしゃいます。
当日は、はじめに開智高校の現状を簡単にご紹介し、さっそく授業を見ていただくことにしました。
見学していただく授業は1年Tクラスの現代文です。
このクラスは、中間考査をはさんでのディベート学習が終了し、再び通常の授業(『論理エンジン』『思考ルート』「教科書」を用いた授業)に戻ったところです。
前時より教科書収録の文章「時間と自由の関係について」を用いた授業を行っています。この授業の「学習のめあて」は大きく2つ設定してあります。
① この文章を使って「3つの論理関係」の習熟を図り、「話題と主張」への論理的な
アプローチ・ルートを確認すること。
② 「自由とは何か」という切り口から、「時間という観念」について自分の視座を具体化
すること。
すでに全文通読は終了しており、本時はOS2を使って①の部分の学習からスタートしました。
各自で指定されたステップに取り組み、その結果を持ち寄って「学びあい」に入ります。
「では、お互いに確認~」…私のこのセリフで、生徒たちは一斉にグループになり、意見交換を始めます。一人ひとりが自分の答えとその思考ルートについて発表し、それに対して周りの生徒が確認したり、質問したり、間違いを指摘したりし始めます。なかには「その説明で加藤先生が納得すると思う?」といった投げかけをする生徒もいます。教室内は一気ににぎやかになります。
私の授業では日常的な光景ですが、その様子をご覧になった先生方は少なからず驚かれていらっしゃるようです…。
もちろん私の授業でも、初めからこのような状況であったわけではありません。1学期当初は、形として机をくっつけあっても沈黙する時間が続てしまったり、話し合いが上っ面をこするだけだったりといった状況でした。
しかしそれはある意味で当たり前の状況といえます。なぜなら、生徒たちは「学びあい」のお作法を学習していないからです。
「学びあい」は学習「形式」ではなく、「思考過程」です。見た目上グループワークのような体裁をとっていたとしても、そこに
・生徒自身が
・自らの意志で、意図的に
・思考を深めようとする姿勢
がなければ、「学びあい」はスタートラインにすらついていません。
この姿勢が取れるようになったうえで、さらに、
・相手の話を集中して聴き、
・自分の考えとの異同を検証しようとする姿勢
が伴うことで、初めて「学びあい」がスタートします。
このような、「学びあい」という思考過程について、中学卒業まで指導されてこなかった生徒たちがほとんどですから、、まずはきちんとそのお作法を教えることが必要です。
1年生は守破離の「守」の段階ですから、徹底的にお作法にのっとった学びあいに取り組みます。その結果が今回の授業にも自然に表れることになったわけです。
初めは遠慮されていた先生方も、生徒たちの話し合いの雰囲気にのまれるようにして、どんどん生徒たちに近づいていきます。
私の授業は見学者が多いため、生徒たちも見られることには慣れていますから、見学者には無頓着に話し合いを続けます。
話し合いが深まった頃合を見計らって、グループでの統一見解をまとめることを指示し、それを発表してもらいます。
その発表内容を受けて、本時のまとめをし、次回までの思考課題を指示して授業を終了としました。
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授業参観後は校内をご案内し、開智での学校改革のプロセスや、先生方の学校で抱えているイシューについて、いろいろな観点から意見交換をさせていただきました。当初は30分程度の予定でしたが、気が付けば1時間半以上の時間が経過していました。非常に有意義な時間となりました。
ご来校いただきました先生方、ありがとうございました。
このような機会に、私も一緒に勉強させていただくことができ、心より感謝申し上げます。
これからも、より良い教育の実現のために、それぞれの学校で頑張っていきましょう。
2014年11月
11月19
11月17
ここ一カ月ほどは週末というと悪天候が続いていましたが、今週は天候に恵まれました。
今年も秋の研修シーズンになり、16日には名古屋でお話しさせていただきました。
いつも通り、第一部では出口先生からご講演をいただき、私は第2部を担当します。
中京地域を中心に40名程度の先生方がお集まりくださいました。
この研修会での、私の講演テーマは「国語教育と『論理エンジン』」なのですが、理念ばかりに終始することなく、できるだけ実践的な話ができるように心がけています。
教育に携わる者は、常に理想を追求し続ける姿勢を持っていなければ、存在意義を失ってしまうわけですが、その理想希求は日々「目の前の生徒」を通して行われなければなりません。抽象化された一般論はそれとして、教師は常に目の前の生徒を伸ばしていく具体的手法を持っていなければならないわけです。
各地で行っているこの研修会は、「指導力向上セミナー」とは異なり、『論理エンジン』をまだ指導したことがない先生方が集まっています。しかし、だからと言って『論理エンジン』の魅力をイメージとして伝えても、参加された先生方にはほとんどメリットがありません。(それならば『論理エンジン』の宣伝リーフレットで十分です。)
そこで、私の話の中心は「『論理エンジン』でできること」の実際をお見せすることになります。
セミナーと違い90分という限られた時間ですので、扱える項目はごくわずかになってしまいますが、できるだけ具体的なお話をするようにしています。
後半では、OS1、OS2の問題を実際に先生方にも解いていただき、生徒の躓きポイントなどを指摘していきます。
学び合いとまではいきませんが、隣の先生と相談していただきながら、各先生が現在指導している生徒をイメージして教材の活用法を考えていただきました。
講座の中で私は、「読解力と得点力とを混同している生徒が多い。中にはその違いを認識しないで指導している教師もいる」という話をしばしばします。そのときにはいまひとつピンと来ていない様子の先生方も多く、今回の研修会でもそのような顔をされていた先生もいらしたのですが、その先生も実際の問題演習を通じてその違いを明確に意図していただけたようです。
先生方相互の話し合いも、後半には大変に盛り上がり、実りある時間を共有させていただくことができました。
日曜日にもかかわらず参加いただきました先生方、ありがとうございました。
微力ではありますが、これからも先生方と一緒に生徒を伸ばすメソッドを開発していきたいと考えておりますので、今後ともよろしくお願いいたします。
次回の研修会は、来月仙台で行います。
多くの先生方のご参加を心よりお待ち申し上げます。
今年も秋の研修シーズンになり、16日には名古屋でお話しさせていただきました。
いつも通り、第一部では出口先生からご講演をいただき、私は第2部を担当します。
中京地域を中心に40名程度の先生方がお集まりくださいました。
この研修会での、私の講演テーマは「国語教育と『論理エンジン』」なのですが、理念ばかりに終始することなく、できるだけ実践的な話ができるように心がけています。
教育に携わる者は、常に理想を追求し続ける姿勢を持っていなければ、存在意義を失ってしまうわけですが、その理想希求は日々「目の前の生徒」を通して行われなければなりません。抽象化された一般論はそれとして、教師は常に目の前の生徒を伸ばしていく具体的手法を持っていなければならないわけです。
各地で行っているこの研修会は、「指導力向上セミナー」とは異なり、『論理エンジン』をまだ指導したことがない先生方が集まっています。しかし、だからと言って『論理エンジン』の魅力をイメージとして伝えても、参加された先生方にはほとんどメリットがありません。(それならば『論理エンジン』の宣伝リーフレットで十分です。)
そこで、私の話の中心は「『論理エンジン』でできること」の実際をお見せすることになります。
セミナーと違い90分という限られた時間ですので、扱える項目はごくわずかになってしまいますが、できるだけ具体的なお話をするようにしています。
後半では、OS1、OS2の問題を実際に先生方にも解いていただき、生徒の躓きポイントなどを指摘していきます。
学び合いとまではいきませんが、隣の先生と相談していただきながら、各先生が現在指導している生徒をイメージして教材の活用法を考えていただきました。
講座の中で私は、「読解力と得点力とを混同している生徒が多い。中にはその違いを認識しないで指導している教師もいる」という話をしばしばします。そのときにはいまひとつピンと来ていない様子の先生方も多く、今回の研修会でもそのような顔をされていた先生もいらしたのですが、その先生も実際の問題演習を通じてその違いを明確に意図していただけたようです。
先生方相互の話し合いも、後半には大変に盛り上がり、実りある時間を共有させていただくことができました。
日曜日にもかかわらず参加いただきました先生方、ありがとうございました。
微力ではありますが、これからも先生方と一緒に生徒を伸ばすメソッドを開発していきたいと考えておりますので、今後ともよろしくお願いいたします。
次回の研修会は、来月仙台で行います。
多くの先生方のご参加を心よりお待ち申し上げます。
講座の後半では、先ほどのリスニングで使った文章を題材とした演習問題を扱います。
リスニング部分を問題文として、設問も付けてあります。設問は指示語や接続詞の解法ルートが点検できる問題や、段落の要点を考えさせる問題など、OS1・OS2での学習が活かせるように工夫しました。
特にこの段階では全文を踏まえさせるような問題は平易なものを1問だけ用意するにとどめ、基本的には各形式段落を論理に従って読解することで正解できるようにしておきます。
『論理エンジン』での学習成果を実感させるためには、ある程度の長さの初見文に取り組ませることが不可欠です。
その教材として既成の問題集を使うことも悪くはありませんが、できれば「目の前の生徒」に合わせて教師が自作するのが良いと、私は考えています。
あてがい扶持のものではなく、教えている生徒に合わせた演習問題、そして自分の指導意図をしっかり反映させた演習問題は、最低限の時間で大きな指導効果を上げることができます。
その教材文には教科書の文章を使ってももちろん構いません。特に教科書と『論理エンジン』との指導の両立を重視している場合には、積極的に教科書の文章を使い倒すのが良いと思います。
一方で、私の場合は、教科書を使うこともありますが、新書から課題文を調達することのほうが多くなっています。これは、「せっかく文章を読むのなら、生徒に問題意識を持ってもらいたいテーマの文章を読ませたい」という意図があるからです。教科書の文章も、いろいろなカテゴリから、良く練って採られてはいます。しかし残念ながら(検定の都合があるため)話題がタイムリーでないのです。
読解や鑑賞の指導ばかりが国語の授業ではありません。与えられた教材を与えられたままに生徒に提供するのは教師の仕事ではありません。読解や鑑賞を通して生徒に見せたい景色が、必ず教師にはあるはずです。それを「演習問題」あるいはディベートテーマという形で生徒に提供していくことで、単位時間当たりの学習効果も違ってくると考えています。
今回のセミナーでは、私がしゃべりすぎて「学びあい」を満足に行っていただくことができませんでした。隣席の先生との相談程度になってしまいました。
「学びあい」を楽しみにして参加してくださった先生方、申し訳ありませんでした。
******************************************************************************
今年度の「授業力向上セミナー」は今回が最終回です。
次年度の取り組みについては、現在検討しています。できるだけ多くの先生方のニーズにお応えできるように努力していきたいと思います。
あさっては名古屋で出口先生とのコラボ講演会です。
名古屋は夏にN中学高等学校の教員研修の講師で伺い、楽しくそして勉強になる時間を過ごさせていただきました。
今回はいろいろな学校の先生方にお会いすることができるので、教員研修とはまた違った楽しみがあります。
参加予定の先生方、よろしくお願いいたします。、
リスニング部分を問題文として、設問も付けてあります。設問は指示語や接続詞の解法ルートが点検できる問題や、段落の要点を考えさせる問題など、OS1・OS2での学習が活かせるように工夫しました。
特にこの段階では全文を踏まえさせるような問題は平易なものを1問だけ用意するにとどめ、基本的には各形式段落を論理に従って読解することで正解できるようにしておきます。
『論理エンジン』での学習成果を実感させるためには、ある程度の長さの初見文に取り組ませることが不可欠です。
その教材として既成の問題集を使うことも悪くはありませんが、できれば「目の前の生徒」に合わせて教師が自作するのが良いと、私は考えています。
あてがい扶持のものではなく、教えている生徒に合わせた演習問題、そして自分の指導意図をしっかり反映させた演習問題は、最低限の時間で大きな指導効果を上げることができます。
その教材文には教科書の文章を使ってももちろん構いません。特に教科書と『論理エンジン』との指導の両立を重視している場合には、積極的に教科書の文章を使い倒すのが良いと思います。
一方で、私の場合は、教科書を使うこともありますが、新書から課題文を調達することのほうが多くなっています。これは、「せっかく文章を読むのなら、生徒に問題意識を持ってもらいたいテーマの文章を読ませたい」という意図があるからです。教科書の文章も、いろいろなカテゴリから、良く練って採られてはいます。しかし残念ながら(検定の都合があるため)話題がタイムリーでないのです。
読解や鑑賞の指導ばかりが国語の授業ではありません。与えられた教材を与えられたままに生徒に提供するのは教師の仕事ではありません。読解や鑑賞を通して生徒に見せたい景色が、必ず教師にはあるはずです。それを「演習問題」あるいはディベートテーマという形で生徒に提供していくことで、単位時間当たりの学習効果も違ってくると考えています。
今回のセミナーでは、私がしゃべりすぎて「学びあい」を満足に行っていただくことができませんでした。隣席の先生との相談程度になってしまいました。
「学びあい」を楽しみにして参加してくださった先生方、申し訳ありませんでした。
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今年度の「授業力向上セミナー」は今回が最終回です。
次年度の取り組みについては、現在検討しています。できるだけ多くの先生方のニーズにお応えできるように努力していきたいと思います。
あさっては名古屋で出口先生とのコラボ講演会です。
名古屋は夏にN中学高等学校の教員研修の講師で伺い、楽しくそして勉強になる時間を過ごさせていただきました。
今回はいろいろな学校の先生方にお会いすることができるので、教員研修とはまた違った楽しみがあります。
参加予定の先生方、よろしくお願いいたします。、
今年度3回目の授業力向上セミナーです。
今回も関東だけでなく、北陸、関西、九州と多くの地域からご参加いただきました。
毎回ご参加くださる先生も多くいらっしゃり、気を引き締めて準備してきました。
今回のテーマは「試験問題に活かす『論理エンジン』」です。
「論理エンジン」は「論理」に集中して学習ができるように、課題文にはきわめて平易な内容のものが用いられています。そのため、学習している生徒はもちろん、指導している先生方も
「こんな優しい文章ばかりで、果たして力がつくのか」という疑問を持ってしまいます。
たしかに「論理エンジン」だけでは、高校生レベルの文章の「内容」についての学習は不十分です。総合的な読解力や得点力を身につけるためには、相応の難易度と分量を持った文章を読み込んでいく必要があります。
しかし、そのような読解力、得点力のベースとなる「知的基礎体力」がついていない状態で問題演習に時間を割いても、読解力、得点力が向上しないのも事実です。
そこで、私は「論理エンジン」の指導段階に応じて、また生徒たちの習熟度に応じて、適切な演習課題(これは教科書でも構いません)を実践することを、セミナーや講演でお話をしてきました。
その実践例をお見せすることが、今回のセミナーの目的です。
今回のセミナーは大きく2パートに分けてあります。
第1部は「論理エンジンン」の指導部分です。教材にはOS2L14とOS3L27を取り上げました。 OS2までで、基本となる3つの論理の学習が完了し、それらを用いたまとめ教材としてのL27という位置づけです。
因果関係のオプション部分を確認した後、3つの論理を黒板で整理します。
次のパートでは比較的平易な内容で、分量としても1,200字程度の文章を課題文とした演習問題を取り上げます。
とはいっても、いきなり演習問題を解き始めるわけではありません。
日本語であっても外国語であっても、言語を扱ううえで4技能(読み、書き、聞き、話す)についてバランスよく習熟することは極めて重要です。(この観点に立ってもディベート学習ははとても優れたスタイルなのですが)
にもかかわらず、国語の指導においては「聞くこと」が軽視されがちです。「聞く力」は「読む力」「話す力」の根本にあるにもかかわらずにです。
私はこの「聞く力」を非常に重視しているので、「論理」の基本を学び終わったタイミングでディベートを行い、また問題演習においても「聞くこと」から入るようにしています。今回もそのスタイルで授業を行いました。
はじめに生徒(セミナーでは先生方)には文章を配布せず、B4サイズの白紙を配布します。そして次のように指示をします。
「これから私がみなさんに一つの話をします。今配った紙にメモを取りながら、私の話を聞いてください。メモの取り方は自由です。その紙をどのように使っても構いません。話し終わった後で、みなさんに次のことを聞きます。
① 私は何について話をしていましたか。つまり、私の話のテーマです。
② 私がみなさんに最も伝えたかったことはなんですか。つまり、私の主張です。
今まで論理エンジンや思考ルートで学習してきたことは、いま一緒に整理しましたね。それらを十分に踏まえて、話を聞いてください。」
そして私は課題文を読み始めます。文章は書き言葉で書かれていますので、その部分は話し言葉に変えて話します。また、聞いただけではイメージしにくい熟語などは黒板に書いたり、平易に言い換えたりしながら、話をします。
英語ではあたりまえのようにリスニングに取り組んでいる生徒たちも、国語のリスニングとなるとほとんど経験がありません。先生方についても同様です。いずれにしても戸惑っている様子がありありとうかがえますが、話し始めてしまいます。
一方で、生徒たちが慣れない段階では、話す(読む)側にはいろいろな工夫が必要です。話すスピードは言うまでもありませんが、例えば、生徒たちが「論理」を意識して話が聞けるように、接続語などはあえて強調して話したりします。「にもかかわらず」「~だから」「このようにして」「言い換えれば」など、論理構造を判断するために必要な言葉などは、それと気づくように話をするなどの工夫します。
セミナーでは時間の関係で、先生方に先述の①②について発表していただくことはできませんでしたが、実際の教室では時間を取って発表させるようにします。慣れないうちはグループ学習で相互に発表させるのもよいと思います。
(この「国語のリスニング」の教育効果については、また別の機会にお話しできればと考えています。)
セミナーはここで休憩を取りました。休憩後は、読解へと移っていきます。
今回も関東だけでなく、北陸、関西、九州と多くの地域からご参加いただきました。
毎回ご参加くださる先生も多くいらっしゃり、気を引き締めて準備してきました。
今回のテーマは「試験問題に活かす『論理エンジン』」です。
「論理エンジン」は「論理」に集中して学習ができるように、課題文にはきわめて平易な内容のものが用いられています。そのため、学習している生徒はもちろん、指導している先生方も
「こんな優しい文章ばかりで、果たして力がつくのか」という疑問を持ってしまいます。
たしかに「論理エンジン」だけでは、高校生レベルの文章の「内容」についての学習は不十分です。総合的な読解力や得点力を身につけるためには、相応の難易度と分量を持った文章を読み込んでいく必要があります。
しかし、そのような読解力、得点力のベースとなる「知的基礎体力」がついていない状態で問題演習に時間を割いても、読解力、得点力が向上しないのも事実です。
そこで、私は「論理エンジン」の指導段階に応じて、また生徒たちの習熟度に応じて、適切な演習課題(これは教科書でも構いません)を実践することを、セミナーや講演でお話をしてきました。
その実践例をお見せすることが、今回のセミナーの目的です。
今回のセミナーは大きく2パートに分けてあります。
第1部は「論理エンジンン」の指導部分です。教材にはOS2L14とOS3L27を取り上げました。 OS2までで、基本となる3つの論理の学習が完了し、それらを用いたまとめ教材としてのL27という位置づけです。
因果関係のオプション部分を確認した後、3つの論理を黒板で整理します。
次のパートでは比較的平易な内容で、分量としても1,200字程度の文章を課題文とした演習問題を取り上げます。
とはいっても、いきなり演習問題を解き始めるわけではありません。
日本語であっても外国語であっても、言語を扱ううえで4技能(読み、書き、聞き、話す)についてバランスよく習熟することは極めて重要です。(この観点に立ってもディベート学習ははとても優れたスタイルなのですが)
にもかかわらず、国語の指導においては「聞くこと」が軽視されがちです。「聞く力」は「読む力」「話す力」の根本にあるにもかかわらずにです。
私はこの「聞く力」を非常に重視しているので、「論理」の基本を学び終わったタイミングでディベートを行い、また問題演習においても「聞くこと」から入るようにしています。今回もそのスタイルで授業を行いました。
はじめに生徒(セミナーでは先生方)には文章を配布せず、B4サイズの白紙を配布します。そして次のように指示をします。
「これから私がみなさんに一つの話をします。今配った紙にメモを取りながら、私の話を聞いてください。メモの取り方は自由です。その紙をどのように使っても構いません。話し終わった後で、みなさんに次のことを聞きます。
① 私は何について話をしていましたか。つまり、私の話のテーマです。
② 私がみなさんに最も伝えたかったことはなんですか。つまり、私の主張です。
今まで論理エンジンや思考ルートで学習してきたことは、いま一緒に整理しましたね。それらを十分に踏まえて、話を聞いてください。」
そして私は課題文を読み始めます。文章は書き言葉で書かれていますので、その部分は話し言葉に変えて話します。また、聞いただけではイメージしにくい熟語などは黒板に書いたり、平易に言い換えたりしながら、話をします。
英語ではあたりまえのようにリスニングに取り組んでいる生徒たちも、国語のリスニングとなるとほとんど経験がありません。先生方についても同様です。いずれにしても戸惑っている様子がありありとうかがえますが、話し始めてしまいます。
一方で、生徒たちが慣れない段階では、話す(読む)側にはいろいろな工夫が必要です。話すスピードは言うまでもありませんが、例えば、生徒たちが「論理」を意識して話が聞けるように、接続語などはあえて強調して話したりします。「にもかかわらず」「~だから」「このようにして」「言い換えれば」など、論理構造を判断するために必要な言葉などは、それと気づくように話をするなどの工夫します。
セミナーでは時間の関係で、先生方に先述の①②について発表していただくことはできませんでしたが、実際の教室では時間を取って発表させるようにします。慣れないうちはグループ学習で相互に発表させるのもよいと思います。
(この「国語のリスニング」の教育効果については、また別の機会にお話しできればと考えています。)
セミナーはここで休憩を取りました。休憩後は、読解へと移っていきます。
2000年度より開智学園の教育理念を具現化するための新教育システムの構築に取り組み、2005年度に「S類」をスタートさせる。独自に開発した【S類メソッド】の柱の一つに『論理エンジン』を位置づけ、3つの力(論理的思考力、判断力、表現力)の総合体としての「智力」の育成に大きな成果を上げている。また、独自の理論に基づく「ソーシャル・スキルの育成」も人間力の向上に大きな効果をもたらしている。 趣味はギター。
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