2013年04月

スプリングセミナー2013 ②

毎年、スプリングセミナーで1年生はディベートに取り組みます。

ディベートは国語力の育成だけでなく、
・筋道立てて物事を考える力
・情報を取捨選択し、整理する力
・他人の話を丁寧に聞く力
・自分の考えをわかりやすく表現する力
など、多彩な力(これを私は知的基礎体力と呼んでいます)を伸ばしていくのには
絶好の教材です。

はじめにS類生全員(122名)を大教室に集めて、私が全体指導を行います。
全体指導はおよそ100分間。使用するのは『思考ルート』の付属教材です。

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この教材には、高校生に身につけて欲しいディベートの基礎知識を修得できる仕掛けだけでなく、論題例に即して準備から実際のディベート・マッチ、そしてジャッジまでを実践的に学習できるような工夫もたくさん盛り込みましたので、今まで全くディベートを体験したことがない高校1年生でも、無理なくディベートに取り組むことができます。

はじめに基本的な用語とお作法を学習し、簡単なテーマのディベートに取り組みます。
論題は「恋の気持ちを伝えるとしたら、電話か手紙か」です。
厳密に言えばディベートではないのですが、それぞれの立場から「立論」を構成してみるのには取り組みやすい課題です。
また、合宿先という「情報収集が極端に制限されている環境」のなかでは、このような「体験に基づく情報」だけで論が構成できるような価値論題が適切でもあります。

ひと通りの準備が終わったところで、各クラスから数班をピックアップし、みんなの前でディベートに取り組みます。
この段階では、「立論」「質疑」「論戦」といった「部分ごと」に私が口を挟み、「良かった点」と「もっと工夫ができる点」を指摘します。この指摘は会場内の生徒全員が共有していきます。

全体指導の最後には、各クラスに対し、セミナー最終日に行う「公開ディベート」の論題を指示しました。
例年は、この論題をクラスで決めるのですが、今年は文化祭への取り組み準備など、LHRで行うことが盛りだくさんであったため、私が4つ提示し、抽選で論題を決めることにしました。
提示した論題は、高等学校の義務教育化の是非や、携帯電話の校内使用の是非など、生徒たちにとって身近な論題としました。

各クラスでは、この日の午後、約3時間かけて準備を行い、クラスの代表チームを選出し、公開ディベートに備えます。
最終日に行った公開ディベートでは、生徒だけでなく、教師もジャッジとして参加しました。

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どのクラスも、短時間の準備にもかかわらず、しっかりした立論を構成しており、論戦も聞きごたえのあるものに仕上がっていました。

公開ディベートの審査をしていて毎年感じるのは、S類に入ってくる生徒の「物怖じしない姿勢」です。
たしかに「論理構成力」や「表現力」はまだまだ荒削りな部分は多いのですが、これらは荒削りだからこそ、これからS類で勉強するわけです。

一方で、その前提となる「表現しようとする姿勢」が不十分であれば、どんなに教師が熱心に指導したとしても、知的基礎体力の伸びは期待できません。
その意味で、S類新入生は智が開発される準備をして入学してきていると感じられるのです。

これは開智高校が入学予定者に2月から行っている「入学準備学習講座」もひと役買っていると思います。
この講座は入学予定者に対して、入学前に4回程度高校に来てもらい、「考えること」「発信すること」を学んでもらうために行っているものなのですが、その成果がスプリングセミナーで早くも発揮されているのだと実感しています。

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今週から、いよいよ本格的に授業が、そして放課後特別講座がスタートしました。
授業の様子も、近々報告したいと思います。

スプリングセミナー2013 ①

スプリングセミナーも今年で8年目。春先の天候は変化しやすく、雨にたたられた年もありましたが、今年は3泊4日の全日程とも天候に恵まれ、気持ちの良いスタート行事となりました。

4月8日、朝9時過ぎに上野をバス12台で出発です。箱根新道に入るとまもなく富士山が美しい姿を現します。
宿舎に到着し、昼食を済ませ、開校式です。

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スプリングセミナーは1年生から3年生まで、すべてのS類生が参加します。
セミナー全体が持つ目的と、それぞれの学年固有の目的とを確認し、開校式は終了です。

開校式後、3年生はすぐに「独習」に向かいます。
3年生にとってのスプリングセミナーは「独習合宿」です。それぞれの学習進度や習熟度に合わせて作ってきた「独習計画」に基づいて、濃密な独習時間を体験していきます。
独習の合間には「講座」も行われるので、メリハリのある学習を行うことができるようになっています。

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1年生、2年生は開校式を行った体育館にそのまま残り、2年生による新入生歓迎行事が始まります。
ひと月以上前から、2年生で組織した「新歓委員会」が中心となって準備してきたプログラムはなかなか盛りだくさんです。
はじめに2年生が1年生の各クラスに付いて、校歌を教えていきます。

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初めのうちはなかなかうまく歌えない新入生ですが、2年生たちは根気強く教えていきます。
2年生たちも、1年前に、この同じ場所で先輩から校歌を教えてもらっていますので、そのときの緊張感が思い出された生徒もいるようです。1年生に寄り添って一緒に歌う2年生の姿が印象的でした。
校歌練習の締めくくりは、1年生各クラスによる発表です。どのクラスも一生懸命に歌ってくれました。

校歌練習が終わると、開智での生活などをテーマにしたクイズなどが行われ、学校生活についていろいろな情報が先輩から後輩へ伝えられたようです。

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いま私が「~ようです。」と表現したのにはわけがあります。
実はこの新入生歓迎行事の後半は、教師は会場から出されてしまいます。
「ここから先は、私たちに任せてください。」という生徒たちの強い意志の表れです。
なかには教師に聞かれたくない話題もあるのかもしれませんが、生徒たちが責任をもって、
自分たちの言葉で、自分たちの実感を後輩へと伝えていくその姿勢は、とても素晴らしいものです。
2年生も確実に成長してくれているなあと実感できる一幕でした。

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歓迎行事が終わると、2年生は「独習」「講座」が始まります。
2年生のセミナー目的は「学習の自己管理」にあります。1年間のS類生活を踏まえて、「与えられる学習」から「自ら求める学習」へと脱皮することができるよう、このセミナーで徹底的に訓練を積みます。「独習」と「講座」とがバランス良く配置されているため、自分でいろいろと工夫できるのが2年生プログラムの特徴です。

それに対し、1年生は「講座」だけでなく、ホームルーム活動も多く取り入れられています。
1年生にとってのセミナーは学習よりも「S類生になる」ことのほうが大きな目的となっています。S類生として、またクラス集団の一員として充実した3年間を送るための作法を身につけていきます。

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今回のスプリングセミナーには、今までにはなかった新しいテーマを取り入れました。
「時鐘祭り(文化祭)」への取り組みです。

今年度から文化祭の実施時期を変更しました。9月から6月へと大幅な移動です。
新年度になってから2か月足らずでの文化祭となるため、効率的な準備が求められます。
そこでセミナーの中でも文化祭についての議論を深めることができるようにしたのです。

文化祭への取り組みについても、S類では、「自分たちのクラスはどのような企画にするのか」といった周辺的事項から話し合いが始まることはありません。
そのような話し合いから出てくるのは、「縁日をやろう」「クレープを作りたい」「お化け屋敷が楽しそう」といった、「文化祭の意味をはき違えた意見」しかないということをS類生は知っているからです。

S類での話し合いは「開智の文化」「S類の文化」を改めて自分たちで自問自答することから始まります。そのうえで、それらの文化の発信手段を形にしていくわけです。
今回は時間が極めて限られていたにもかかわらず、各クラスとも学年に応じて活発な議論が行われていました。
なかには掘り下げすぎて、話題が抽象化してしまい立ち往生しているクラスもあれば、安易な方向に流れそうになる議論を必死になって自制しようとしているクラスもありました。

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学校に戻ってからも、文化祭までの間には中間考査やゴールデンウィークがあります。まさに時間との闘いですが、そのような厳しい条件の中で、どのようなものを作ってくるのか、今から楽しみです。

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今回の報告はここまで。
次回は、このセミナーで1年生が取り組んだ「ディベート」について取り上げたいと思います。

2013年度が始まりました

2013年度最初の一週間が過ぎました。
今年度は月曜日始まりなので、盛りだくさんの一週間です。

1日は開智学園全体での打ち合わせです。
学園の教育方針の確認や、昨年度の教育活動についての総括、および今年度の活動方針などが理事長から示され、すべての教職員がそれを共有していきます。

開智学園には、総合部・中高一貫部・高等部・開智未来中学高等学校と
大きく4つの枠組みがあります。
それぞれに所属する教師は総数で400名近くになります。
日常的な交流や情報交換などは、教科や各セクション単位で密接に行われていますが、
年に2回は全員が一堂に会して打ち合わせを行います。
春の打ち合わせは毎年4月1日に行うことになっています。

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2日はそれぞれの枠に分かれての打ち合わせや教員研修が行われます。
高等部の教員研修は、私が担当しています。

このブログでは、他校の先生方への教員研修の模様をしばしば紹介しているので、時折「開智高校の先生方への研修は行っていないのですか」とのご質問をいただくことがあるのですが、もちろんそんなことはありません。
開智高校の先生たちへの研修は7年前から行っており、4年前からは原則として月例で実施しています。
外部の先生方に行う研修は『論理エンジン』指導を核とした国語科教育をテーマとしたものが中心ですが、内部で行う研修は生活教育やキャリア教育などの、学年・担任指導にかかわるものや、授業評価や教育システム改革をテーマとした研修が中心となっています。

今回の研修(4月研修)は、3月研修と連動させており、以下のテーマついて取り組みました。

①「2012年度の指導を振り返り、現状を認識すること。」
②「現状認識に基づき、2013年度指導のゴールイメージを明確にし、
  行動内容を具体化すること」

これらについて、細目ごとにタスクブレイクダウンを行いながら、自己検証し、それを相互に発表することを通してさらに深めていきます。

開智高校では、授業のスタイルとして「学びあい」を多く取り入れています。
教員研修も例外ではありません。
先生たちが主体的に思考していくために、また、広い観点から物事をとらえていくために、私は教員研修のなかにも積極的に「学びあい」スタイルを取り入れるようにしています。
普段の授業で積極的に「学びあい」を推進している教師集団ですので、研修での「学びあい」も実に活発に行われます。

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研修を通して作成した「2013年度行動計画」は、シートにして提出し、研修のまとめとしました。

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3日~5日は、教科や学年単位での打ち合わせ、校内施設や教室の整備、入学式・始業式の準備などが行われます。8日に出発するスプリングセミナーの準備や打ち合わせなどもあり、毎年のことですが、1年で最も慌ただしい3日間となります。

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6日には、午前中に始業式、午後に入学式を行いました。
爆弾低気圧の襲来が予報され、「不要不急の外出は避けるように」といわれる中での実施でしたが、幸いにも予報ほどひどい天候とはならず、無事に全学年の生徒たちが新年度のスタートを切ることができました。

開智高校は、卒業式も個性的なのですが、入学式にも特徴があります。
一般的な高校の入学式では、「入学許可」が式次第に入ることが多いと思いますが、開智高校の入学式には「入学許可」という項目はありません。
開智高校では、担任が入学する生徒の名前を一人ひとり呼びます。
名前を呼ばれた新入生は、これから過ごす開智高校での3年間について、抱負や志などを一人ひとり発信していきます。
「大学受験に向けて、勉強を頑張ります」
「自分らしさを探し求めたい」
「部活動にも力を入れたい」
「未来の自分が誇れる3年間にする」
「宝物となる友人をつくる」
など、個性豊かなメッセージが語られていきます。

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今年度も、頼もしい生徒たちが入学してきました!

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昨日入学したS類新入生122名を加え、今年度のS類生は総勢428名となりました。
この428名のS類生たちは、明日から3泊4日のスプリングセミナーに参加します。
すべてのS類生が充実した3泊4日を過ごし、満点のスタートが切れるよう、私たちS類の教師集団も全力でサポートしていきます。
スプリングセミナーの模様は、このブログでも紹介する予定です。ぜひご覧ください。
プロフィール

2000年度より開智学園の教育理念を具現化するための新教育システムの構築に取り組み、2005年度に「S類」をスタートさせる。独自に開発した【S類メソッド】の柱の一つに『論理エンジン』を位置づけ、3つの力(論理的思考力、判断力、表現力)の総合体としての「智力」の育成に大きな成果を上げている。また、独自の理論に基づく「ソーシャル・スキルの育成」も人間力の向上に大きな効果をもたらしている。 趣味はギター。

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