2012年09月

授業見学

今年度の時鐘祭も無事に終わり、25日は早朝から後片付けです。

そんなバタバタのなか、岐阜県から私立U中学・高等学校の先生方7名が
授業見学に来てくださいました。

今回ご参観いただいたのは「指示語」と「接続語」の導入授業。
『論理エンジン』と『思考ルート』を教材として使います。

はじめに「指示語」の定義とその特性について『思考ルート』で確認します。

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生徒のとって「指示語」は初めて学習する事項ではありません。
しかし多くの生徒たちは「指示語の働き」について、実は「なんとなく」しか理解していないのが実情です。
その「なんとなくわかったつもり」になっている「指示語の働き」を丁寧に整理しながら、論理構造の中で押さえ込んでいきます。

ひと通りの定義が終わったところでさっそく演習です。
『論理エンジン』の問題はどれも一見やさしそうですが、実際に取り組んでいくと、さっそく立ち止まる場面が出てきてしまいます。

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授業の後半は「学びあい」スタイルです。

各自で取り組んだ問題について発表しあい、思考の根拠とルートとを共有します。
このプロセスは、私の授業に欠かすことができないものです。

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見学に来られた先生方も、生徒たちが活発に議論する様子や、その議論の質の高さに驚かれていたようです。
私から見ても、生徒の議論の質は、1学期当初からは想像ができないほど高いものとなっています。上っ面の議論ごっこではなく、しっかりとした底力を身につけ出しているようです。

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1時間の授業見学はあっという間に終わってしまい、その後は約2時間にわたって様々な意見交換をさせていただきました。

遠方からお越しくださいました先生方、ありがとうございました。
次はぜひ私がうかがわせていただきたいと思います。

時鐘祭 ポスターセッション

9月22日・23日の二日間、時鐘祭が行われました。
今年の時鐘祭はあいにくの雨模様でしたが、保護者のみなさまをはじめ、
開智の受験を考えている中学生や在校生の友人など、たくさんの方々に
ご来校いただきました。ありがとうございました。

さて、今年の時鐘祭のS類企画は「ポスターセッション」
S類生は、入学以来「Contemporary issues」に取り組んでいますが、その中間発表を
今年は「ポスターセッション」で行ってみようというわけです。

ポスターセッションに取り組むのが初めてという生徒がほとんどですので、今回はポスターの内容についても、プレゼンテーションのフォーマットについても、細かい縛りは設けません。
1年生も2年生も、「自分の研究内容をわかりやすく伝えるための工夫をしよう」という目標を一つだけ共有し、取り組みます。

S類には、1年生が約170名、2年生が約150名在籍しています。そのすべての生徒に時鐘祭で発表してもらいたいのですが、時間的制約のため実現できません。
そこで2学期に入って、1年生はクラスごとに、2年生は研究カテゴリごとに全員発表会を実施し、その結果、各学年25名ずつを選抜することにしました。

発表者の研究テーマは以下のようになっています。

≪1年生≫
1年

≪2年生≫
2年

発表の持ち時間は一人15分間。10分間を発表に使い、残りの5分間を質疑応答に充てている生徒が多く見受けられました。

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鋭い質問に立ち往生してしまう生徒、逆にすべての質問に難なく答える生徒、
更には、自分の方から聴衆に質問を投げかける生徒など、
普段の学校生活や授業では見ることができない生徒の姿をいろいろとみることができました。

発表者を含め、すべてのS類生の諸君、お疲れさまでした。

今後は、1年生は「研究の深化」のフェーズに入ります。2年生は、来月には米国研修。そして学期末には最終論文の提出が待ち構えています。
それぞれの学年で取り組みは違いますが、今迄通り、妥協することなく取り組んでいきましょう。

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今回のポスターセッションを通して、私が最も驚かされたのが、生徒たちの発表力の高さでした。
研究そのものについては、どの生徒たちも踏み込んだ研究をしていることは知っていましたが、
その研究成果を不特定多数の前で発表することについては、やや不安があったのですが、
全くの杞憂でした。
発表の内容もとてもわかりやすく(つまり、論理的であり)、伝え方も明瞭で堂々としていました。

S類への入学後まもなくのうちは、授業での発表でさえもうまくできなかった生徒たちが、ここまで成長してくれた背景には、開智の「学びあい学習」を通して、「自分の考えを発表する」ことを毎時間のように体験していること、そして、現代文の授業(『論理エンジン』『思考ルート』の授業)を通して、「論理的に構成し、わかりやすく伝えること」を学んできたことが確かにあるのだろうと実感しました。


今回のポスターセッションの取り組みを通して、開智の教育目標の一つである、「創造型・発信型のリーダーを育成する」ことを、S類生たちが着実に具体化してくれていることも確認することができました。

S類生たちは、私たち教師の予想をはるかに超えたスピードとクオリティをもって日々成長しているようです。
私たち教師も、もっともっと頑張らねば!

授業点描2

「文の作成」2時間目は『論理エンジン』から離れて実践課題に取り組みます。

課題文を読み、その中で筆者が指摘している内容について文章にまとめていきます。

課題文として取り上げたのは、
小菅正夫氏の『〈旭山動物園〉革命』(角川書店)です。
この文章は慶應義塾大学経済学部の入試に出題されており、今回はそれを教材化して使用しました。

ただし、大学入試問題に使われた文章であることを初めに明かしてしまうと、それだけで「難しいのでは」という間違った先入観を持つ生徒が出てきてしまうので、そのことは伏せてプリントを配布します。


最初の課題は「閉園の危機にあった旭山動物園が、そこから脱却するためにどのような工夫をしたのか」を本文から読み取り、300字でまとめるというものです。
まず本文読解から始めるわけですが、ここでのポイントは「アウトライン読み」でなく、
「ディテール読み」を実践する点にあります。
読解の2方法については『思考ルート』で学習してきたわけですが、
それを意図的に実践することが大切です。

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すべての生徒がしっかりと論理マークと付けながら、読解しています。

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読解が終わって、300字にまとめるためのパーツ出しが済んだ時点で、この課題への取り組みはいったん終了し、次の課題に進みます。

次の課題は、本文内容を踏まえながらも、「自分の考えを述べる」というものです。
今回、生徒たちに考えてもらうのは「市立動物園を新設することについて市の職員として市民を説得するにはどうしたら良いか」ということです。
その「考え」を文章化していきます。

この課題をクリアするためには、読解力だけでなく、課題分析力や創造力、そして文章構成力が必要になってきます。
わかりやすく、説得力のある意見を構築し、文章にまとめていくためには、いままで学習してきた「思考ルート」に加え、前時で確認した「文の作成」力が必要です。

いろいろな角度から生徒たちはアプローチしていますが、まだ高校1年生ということもあり、課題の的確な分析と、独創的な視点を見出すことに苦労しているようです。

しかし、なかには簡易的ではありますが、マインドマップを作って自分の考えを整理している生徒もいます。
マインドマップ法については、1学期に簡単にレクチャーしただけなのですが、それをさっそく実践に役立ており、驚かされました。

マインドマップを書こうという発想自体、「筋道立てて考えていこう」という姿勢がなければ生まれてくるものではありません。
そのような姿勢を持った生徒が教室の中に出てきたということが、論理を教えている教師にとっては、このうえない喜びです。

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次回の授業では、生徒たちがまとめたものを使って、意見交換をしていきます。

授業点描

先週の授業ではポスターセッションを取り上げたため、2学期の『論理エンジン』の授業は
今週からスタートしました。

今日の中心教材はOS1-Lv9。テーマは「文の作成」です。

はじめにLv6~8の内容を振り返ります。
『論理エンジン』は各レベルの扉に「学習ポイント」が示されているので、
その部分を見直すことで、簡単に振り返りができます。

生徒と一緒に読み合わせをしながら、ボードに整理します。

「文の作成」についての、『論理エンジン』での学習ポイントは
・「言葉の規則に従う」ということ。つまり、
・「主語―述語/つながり/付属語」を意識し、意図的に文を組み上げることであること。
これらを再確認していきます。

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ざっと確認し、さっそくLv9に各自で取り組みます。


St1~7まで解答し、隣席の仲間と相互に解答内容を点検します。
ここでの「点検」とは、単なる答え合わせではありません。
相手の答えについて、それが自分の答えと同じであっても、違っていても、
そのことにかかわりなく「評価」することを、私は生徒に課しています。

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「評価」は感覚的に行うものではありません。根拠をもって論理的に行うべきものです。
つまり、相手の答えを聞いて「それで良いと思います。」と返すことは
「評価ではない」ということです。

私の授業では、相手を評価する際に「~思います。」を使うことは許されません。
必ず「私は~と判断します。」と返す約束になっているのです。

「判断する」ためには、判断の根拠が不可欠です。
必然的に判断する人間は根拠を探すことになります。そして、根拠に基づいて意見を構築し、
わかりやすく伝えようと心掛けるようになります。
この一連の思考活動が、より一層生徒たちの思考ルートを深めていくことになるのです。

相互点検が終わると、いくつかの問題についての解答案をボード発表し、
それについてみんなで「点検」していきます。
点検「される」生徒はドキドキですが、それ以上にドキドキするのが点検「する」生徒です。
それはもちろん、みんなの前で「評価」しなければならないからです。

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突然指名され、即座に的確な評価を下すことは、かなりハイレベルな思考活動ですが、
この経験を繰り返し積むことで、思考ルートの的確さと素早さを身につけていくだけでなく、
発信力も高めていくことができます。

緊張してしまってうまく考えがまとまらない生徒も多くいますが、
なかには驚くほど理路整然と、落ち着いて評価ができる生徒もいます。

高校1年
生の段階では、「自然に身についた、日常生活に困らない程度の日本語力」しか
持っていない生徒がほとんどですから、このようなバラツキが生じるのも無理はありません。
しかし、このバラツキも1年後にはほぼ解消されていきます。
生徒の潜在能力の高さには毎年感心させられます。

ポスター・セッション②

ポスター・セッション準備の2時間目です。

前時において、生徒たちはプレゼンテーションの「わかりやすさ」を定義しました。そして、それらの定義を確認する過程で、「わかりやすさにはいくつもの視点がある」ということに気付いています。たとえば、
・「テーマ設定における、わかりやすさ」
・「構成についてのわかりやすさ」
・「伝達の仕方についてのわかりやすさ」
などが、挙げられています。

そこでこの時間では、確認した定義に照らし合わせながら、自分が用意してきたスライドを見直していきます。
まずは各スライドについての説明文(アウトライン文)を付けていきます。

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基本的には個人活動なのですが、S類の生徒たちは自然とグループで活動し始めます。
活動の端々で、近くにいる仲間に意見を求めたりしています。
(中にはダメ出しを食らってヘコんでいる生徒も・・・)

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活動が進んでいくなかで、多くの生徒たちが気付き始める共通ポイントがあります。
それは「スライド間の論理的構成の不十分さ」です。

夏休みを使って、自分一人でスライドを作っている時点では、どの生徒も自分のスライドには
論理性があると考えています。
少なくとも自分なりに「一連の流れ」を持ったスライド構成にしてきています。
しかし、「15の定義」の学習を通して、「一連の流れ」が実は自分の頭の中だけでの自己完結
であったことに気付き始めるのです。
「自己完結してしまっている論理性」と「他者意識に基づく論理性」とのギャップに気付き始めた
といってもよいでしょう。
自分の頭で「わかっている」ということと、それを他人に「わかりやすく伝える」ということとは
全く違った次元の話であることを実感しているのです。

この実体験は、生徒たちが意図的に論理を学び、深めていくために欠かせないものです。
今年の1年生も体験的に「論理の本質」へとアプローチし始めたようです。

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現代文の授業でポスター・セッションをサポートするのはここまでです。
ここから先は、生徒は自分で、あるいは自分たちで「試行」していかなければなりません。
「試行」と「思考」とを重ね、「至高」に近づけていく、まさに『思考ルート』の学習です。

この後はホームルームでの発表、そして文化祭での発表が待ち受けています。
どのような発表に仕上げてくるか。2週間後が楽しみです。

ポスター・セッション①

S類には、その教育理念を具体化するための大きな柱が2本あります。
一つは『論理エンジン』『思考ルート』。
これは、論理的な思考力や判断力、表現力を育成するための取り組みです。

もう一つが「Contemporary issues」。
これは、課題発見・解決力とコミュニケーション能力を育成するための取り組みです。

どちらの取り組みも短期間に行うようなものではなく、約2年間かけてじっくりと取り組む、
S類の教育活動そのものといえる内容です。

さて、今回は「Contemporary issues」の第1回中間発表(1年次発表)に向けての
準備段階での、生徒たちの様子を報告したいと思います。

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「Contemporary issues」とはその名の通り、「現代社会が抱える諸問題」について考察をする
取り組みです。

生徒たちは自分の興味・関心からスタートし、現代社会における問題のリサーチを通じて、
自分の研究テーマを設定していきます。
研究テーマがある程度定まると、テーマの分析、仮説の構築、理想形のプランニングなど
の諸活動に入っていきますが、学期中は授業をはじめとした様々な活動があるため、
多くの生徒は夏期休業期間を使って研究を進めることになります。
そして、ここまでの研究の成果を発表するのが「第1回中間発表」なのです。

この「第1回中間発表」は約2週間をかけて、すべての生徒がクラスメートの前で発表します。
発表のメイン形式は「ポスター・セッション」です。
ポスター・セッションのほかに、全員が研究経過をまとめたレポートも提出します。

レポートについては、多くの生徒たちが取り組み慣れていますが、ポスター・セッションに
ついては初めて経験する生徒がほとんどであるため、どの生徒たちも試行錯誤しながら、
ずいぶんと苦労しているようです。

2学期最初の現代文の授業では、ポスター・セッションでの発表に向けて、国語的な観点から
プレゼンテーションのクオリティを高めていく学習を行います。
基本となる学習形態は「学びあい」です。

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最初の学習テーマは「わかりやすく伝えるとはどういうことか」です。

一口に「わかりやすく」とはいっても、その中身は漠然としています。
(これは生徒に限らず、大人でもそうであると思います。)
その原因は一つ。 「わかりやすい」とは何かということが「定義されていない」ということです。
そこで、この定義づけから授業がスタートしました。

はじめに次のような課題を生徒に与えます。
「『わかりやすい』とはどういうことか、それを端的に表現しましょう。一人15個挙げて下さい。」

ほとんどの生徒が「15個も…」といった反応です。
おそらくどの生徒も5つくらいはパパッと出てきます。そしてそこで手が止まります。
しかし、ここからが勝負です。考えて、考えて、考えて、何とかひねり出していく。
この活動が生徒たちの思考力を鍛えていきます。

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じっとレポート用紙を睨み付ける生徒、天を仰ぐ生徒、ペン回しを始める生徒、
なかには視点が定まっていないような生徒もいます。
みんな必死にひねり出していきます。

10分間時間を取りましたが、多くの生徒が10個前後で、ほぼ手が止まっています。
そこでこちらから「マインドマップ法」について簡単にレクチャーするとともに、イコールの関係や
因果関係、対比の関係などを意図的に使って「もう一押し」するようにアドバイスをします。

これにより、さらに数個を上乗せすることができた生徒が多数出てきます。

ここまででおよそ15分間。自分一人の脳みそを使うのも、もう限界です。
そこで次のステップに移ります。もちろん学びあいです。
今回の学びあいは2段構えで行いました。
最初は4人グループ。次に、4人グループ+4人グループ=8人グループです。

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相互に発表しあいながら「自分と共通の視点」と「自分では気がつかなかった視点」とを
それぞれ相互確認していきます。

最後に、グループごとに数個ずつの定義をボードに書き並べていき、
「クラスとしての15個の定義」を完成させます。

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自分一人の力ではなしえなかった「15個の定義」が、チームで取り組むことにより、
整理され、さらに練られた定義となって、自分たちの目の前に現れます。

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夏休みが終わったところで、生徒たちの脳みそは、やや「休みボケ」状態だったかもしれません。
しかし、この1時間の取り組みで「深く思考すること」「学びあうこと」を取り戻してくれました。

次の時間は、この定義をもとにポスターと向き合っていきます。
プロフィール

2000年度より開智学園の教育理念を具現化するための新教育システムの構築に取り組み、2005年度に「S類」をスタートさせる。独自に開発した【S類メソッド】の柱の一つに『論理エンジン』を位置づけ、3つの力(論理的思考力、判断力、表現力)の総合体としての「智力」の育成に大きな成果を上げている。また、独自の理論に基づく「ソーシャル・スキルの育成」も人間力の向上に大きな効果をもたらしている。 趣味はギター。

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