2012年05月

クレオール②

今回の授業のテーマは「一文の要点 → 一段落の要点」です。

文の要点については、思考ルートに沿って、「素早く、的確に」おさえることが
できるようになってきましたので、それを「段落サイズ」に発展させていきます。

ここでの学習ポイントは、段落を構成している各文の要点を「見比べる」ことです。

教科書を「読み流す」ことがなくなった生徒たちも、その読解の中から拾い上げた
要点を「読解と同時進行で的確に選別する」ことは、まだできません。

漠然と「このあたりが大事そうだな」といった程度の選別ならみんなできます。
そして、対象となる文章が、いま扱っている教科書の文章なら、その「勘」も当たります。

しかし『思考ルート』で身につけてほしい読解力は、そのレベルではありません。
「勘」では読めないような難しい内容の文章であっても、
論理で「大事なところに的確にアプローチできる読解力」、そのような盤石な読解力を
身につけていくことが、今の学習の狙いです。

その意味でも、現在の学習で大切なのは「意図的に読解する」ということになります。
焦らず、あわてず、そして慢心せず、丁寧に学習してくことが、とても大切な時期なのです。

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●前の時間のおさらいです。一文の要点をとらえるルートを確認します。
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●『思考ルート』に沿って、教科書を読んでいきます。
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●まとめた「段落の要点」をボードで発表します。
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『論理エンジン』『思考ルート』の指導・学習は、初めが肝心です。
学習する生徒もそうですが、特に指導する教師は、このことを強く認識しておく必要があります。

どのような力を身につけさせるために授業を行っているのか、自分の指導の「目的」を見失ってはいけません。そして「目的」を達成するためには、安易な妥協も禁物です。

教科書や問題集を「こなす」ことが目的なのか、教科書や問題集を通して、生徒を「伸ばす」ことが目的なのか、

この問いは、授業の前に、毎時間必ず自問自答する、私自身の問いでもあります。

クレオール①

『論理エンジン』OS4 レベル4が終わり、再び『思考ルート』に戻ります。
今日からは『思考ルート』の中心となる機能「教科書と論理エンジンとの連携」を実践指導していくフェーズです。

検定教科書は教科指導用の教材の一つにすぎませんが、その採択が義務付けられているという点において、他の教材とは大きく異なります。
言い換えれば、採択が義務付けられているという一点において、他の教材よりも優位にあり、
一般的には教科指導の中心教材として考えられています。

『論理エンジン』を採択している多くの学校で、『論理エンジン』の教育効果の高さを認識しながらも、その効果を生徒一人一人の学力に反映させていくことに苦慮している原因が、この「教科書=中心教材」という「慣習」「思い込み」にあるわけですが、その「思い込み」を払拭できる学校は、残念ながらあまり多くはありません。今でも多くの学校では教科書を中心教材として授業が展開されているわけです。

そのような「教科書中心授業」を行っている学校でも、そのスタイルを大きく変更することなく『論理エンジン』を導入することができるように開発したのが、『思考ルート』なのです。

本校では東京書籍の教科書を採択していますので、『思考ルート』も東書版を使用しています。
今日から4コマの予定で、導入単元「希望としてのクレオール」を扱います。
 ※以下の授業展開の紹介は、かなり簡略化しています。詳しい授業展開については『思考ルート』本冊で確認することができます。

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●はじめに『思考ルート』で、アウトライン読みとディテール読みとの特徴を確認し、
 まずは「慣れた読み方」で、全文を7分間で通読します。
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 ・「自分が『大切だ』と思ったところに線を引きながら読み進めるのがポイントです。

●自分が線を引いた箇所の特徴をまとめ、その部分についてグループで相互評価を行います。
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 ・この活動を通して「他者である筆者と『見解をそろえること』の重要性」を学んでいきます。

●通読が終わったら、ディテール読みに入ります。
 『論理エンジン』OS1レベル4と密接にリンクした学習となります。
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 ・文の要点をとらえ、それを段落の要点へと応用していくプロセスを、教科書の文章を使って
  確認していきます。
  『論理エンジン』とは違って、「高校生用の文章」を扱うため、やや時間はかかりますが、
  『論理エンジン』で「文の要点」についてしっかりと学習しているので、読解がブレません。

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次回の授業は一週間後。中間考査前日です。

『思考ルート』と学びあい

小学校・中学校でイメージづけられた「国語の勉強」と、『論理エンジン』『思考ルート』を核として
展開される「国語の勉強」との違いに触れた生徒たちは、
そのアプローチ方法の圧倒的な違いに、初めこそ戸惑いを示しますが、数時間の授業を通して、
間もなく順応できるようになります。

次のフェーズでは、国語の学習に対する意識改革の端についた生徒たちを
一つ上のステージに引き上げて行きます。
その原動力に私は「学びあい」を活用しています。

新しいことを身につけるときには、その基礎的な手順(思考ルート)については
「習う」ことが必要です。
しかし、それらの「お作法」をひと通り習った後には、そのお作法を身につけるための
「練習」が必要になります。

この「練習」のステップを、私は3段階に分けて指導しています。

① 自分一人の力で、基礎的な思考ルートを自在にたどることができる力を
  身につける段階。
② 友人と学びあうことで、自分にはない思考ルートを疑似体験し、複数の
  思考ルートをたどる段階。
③ 様々な「思考」ルートを、自分の力で「試行」することで、「至高」のルート
  にたどり着こうとする段階。

①・③は独習によって、②は学びあいによって達成されます。

今回の指導でいえば、『論理エンジン』『思考ルート』によって、論理的に現代文を理解するための基礎的な知識や方法を身につけることが①にあたります。
そして、①で自分なりに身につけたスキルを使っていくつかの課題に取り組み、その結果を共有する段階が②となるわけです。

今回は②の学習の様子を紹介します。教材は『論理エンジン』OS1:レベル6・7です。

●『論理エンジン』を使って、前回までに学習した内容について各自で確認学習を行います。
 (※ 私の授業では、生徒たちが班の形になって勉強するのが基本スタイルです。)
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●確認学習の内容をボードに書き、そのような結果になった「思考ルート」を発表します。
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●その内容について私がコメントをつけます。
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●次の課題については、まず自分で取り組んだ後、グループの仲間と思考ルートを共有します。
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●その結果、「自分たちとしての至高の解答プラン」をボードで発表します。
 ボードに発表された他のグループの解答プランを見て、さらに思考を深めます。
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初めのうちは、どうしても指導に時間がかかりますが、時間をかけて学習することには
意味があります。

従来型の国語教育では、「日常生活に困らない程度の日本語が使える」ことをもって
「多くの生徒は、日本語には不自由していない」と前提してしまっています。
そして、この不確実な前提の上に、国語の指導を成り立たせようとしているのです。
(今でもなおこの前提を持って指導している小・中・高が多数あることが、私にとっては
 驚きなのですが。)

本校に入学してくる生徒たちも、従来型の国語教育を受けていますので、自分自身の
国語力(日本語運用能力)がどれだけのレベルであるかの検証をせずに、義務教育を
終えてしまっています。 自分がそのような状態にあることすら自覚していません。

このような生徒たちの現状を認識せず、「日常生活に不自由しない程度の国語力」で
教科書の文章を読ませていくだけであれば、時間はかかりません。
しかし、そのことによって子供たちの「何が伸びるのか」私にはわかりません。

「伸ばしたい力がある」… だからこそ、ここでの指導には時間が必要なのです。

思考ルートの授業が始まりました。

ゴールデン・ウィークが終わり、年度初めの慌ただしさも収まって、学校もやっと日常のリズムで動き始めました。久しぶりの更新です。

今年度は、高校1年生の現代文を担当することになりました。
教材は『論理エンジン』『思考ルート(東京書籍版)』そして教科書です。

年々、授業に割ける時間が少なくなっていく中で、「できるだけ多くの生徒の指導をしたい」というわがままな思いを貫くため、2クラスを合併し、大きな教室で指導を開始しました。
70人弱の生徒を指導するため、このブログでも何回か紹介させていただいた森澤先生に、サポートについていただいています。

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『論理エンジン』『思考ルート』を用いた指導では、特に導入期の指導が非常に重要です。

生徒たちは今までの学校生活の中で「国語力に対する誤った認識」を身につけてしまっています。
この認識がある限り、生徒たちの思考力や表現力を豊かに伸ばしていくことはできません。
なぜなら私たちは国語(日本語)を使って思考し、表現しているからです。

したがって、導入期の授業では、「誤った認識の払拭」を、丁寧かつ徹底的に行っていきます。
このフェーズでは『思考ルート』を使います。

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ここでは、生徒たちの「意識改革」を目的としていますので、内容は大学で行われる「言語学」講座並みの事柄まで扱います。もちろん『思考ルート』では、それらの内容を高校生が十分に理解できるようにアレンジしてありますので、難しくはありません。

導入前期の2コマ(50分×2)の指導で、生徒たちの顔つきがもうすでに変わり始めています。
期待通りの「エクスペリエンス」を敏感に感じ取ってくれているようです。

「意識改革」は順調に進みそうです。

プロフィール

2000年度より開智学園の教育理念を具現化するための新教育システムの構築に取り組み、2005年度に「S類」をスタートさせる。独自に開発した【S類メソッド】の柱の一つに『論理エンジン』を位置づけ、3つの力(論理的思考力、判断力、表現力)の総合体としての「智力」の育成に大きな成果を上げている。また、独自の理論に基づく「ソーシャル・スキルの育成」も人間力の向上に大きな効果をもたらしている。 趣味はギター。

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