2012年04月

現代文指導法勉強会

高校1年生「国語総合」の現代文領域の指導についての勉強会にお招きいただきました。
大阪府にある、120年以上の伝統をお持ちのM中学・高等学校です。

今年度から『論理エンジン』に加え、『思考ルート』を導入されるということで、指導計画をどう組み立てていくかといった実務的なテーマから、「どのような人間を国語科として育てていくか」といった本質的なテーマまで、多岐にわたって意見交換をさせていただきました。

M中学・高等学校では、この日の午前中に、今年度第1回目の保護者会が開催されたということで、非常にお忙しい中にもかかわらず、多くの国語科の先生が参加されました。
開始後まもなく校長先生もご参加され、非常に中身の濃い勉強会となりました。

M中学・高等学校や本校に限らず、『論理エンジン』を導入している学校に共通する悩みは、
「『論理エンジン』の教育効果を、どのように生徒たちにもたらしていくか」
という点にあります。
「『論理エンジン』の指導と教科書の指導とをどのようにマッチングさせていくか」
という悩みと置き換えることもできます。

それを解決するために、『思考ルート』を開発したわけですが、実際に運用していくのがこれからなので、解決すべき課題も山積みです。

しかし、今回の勉強会を通して一定の方向性を先生方と共有することができ、指導のイメージも具体化することができました。
これからもきめ細かく情報を交換し合いながら、生徒を伸ばすためのより良い指導方法を研究していきたいと考えています。

今回のような勉強会のネットワークがもっともっと広がっていけば、今までにはなかったような
「新しい国語教育の姿」が見えてくるのではないか、そんな予感がする勉強会でした。

M中学・高等学校の校長先生、K先生、そして多くの先生方、大変にお世話になりました。
そして、今後ともよろしくお願いいたします。

スプリングセミナー③

最終日の午前中は「公開ディベート」です。
前日までに各クラスで行ったディベートの成果を発表します。

今年のS類1年生は5クラスありますが、各クラスとも興味深い論題を
取り上げていました。

S1組:小学生は携帯電話を持つべきである。
S2組:電子辞書と紙の辞書とではどちらが優れているか。
S3組:自転車は車道を走るべきである。
S4組:消費税を5%以上にすべきである。
S5組:高等学校を義務教育化すべきである。

S2組のテーマは「価値論題」であり、他の4クラスとは少し違った切り口です。
また、S3組のテーマについては、厳密に言えばディベータブルではありません。
(自転車は車道を走らなければならないからです。)

各クラスとも、論題の設定の仕方やその後の定義づけについては、粗削りな部分が
多くありましたが、「自分たちで話し合い、自分たちでテーマを設定し、自分たちで
ディベートを行っていく」という、ディベート学習の非常に重要な部分については
しっかり学習できていました。

BlogPaint
(審査に夢中で、写真はこの1枚しか撮っていませんでした…)

学校に戻ると、いよいよ『論理エンジン』と『思考ルート』を使った学習が
本格的にスタートします。
その様子については、このブログでもいろいろ報告していきたいと思います。

スプリングセミナー②


このセミナーで、1年生は徹底的にディベートを行います。

ディベートは現代文学習の究極目標であるとともに、ソーシャル・スキルを高める
ためにも非常に効果的な学習事項です。
今回の合宿のように、初めてであったクラスメートとクラス集団を形成していく過程でも
非常に効果的な活動といえます。

ディベートについては中学校で学習してきた生徒も何人かいますが、多くの生徒は初めて
取り組みますので、まずは「ディベートとは何か」というところから始めます。

今回は『思考ルート』に付属しているディベート教材を用いて指導をしました。
S類に入学してきた1年生は約170名いるので、体育館での指導となりました。

CIMG2677CIMG2676

BlogPaintBlogPaint


ひと通り、テキストでの学習が終了した後で、早速、サンプル。ディベートに取り組みます。
合宿先ということで、生徒たちは情報収集の手段を持っていないため、身近な価値論題を
取り上げます。
今回のテーマは「恋の気持ちを伝えるとしたら、手紙か、電話か」としました。

それぞれが自分の支持する立場に立って、
①その立場を支持する根拠。
②異なる立場を支持する人の根拠の予想。
をシートにまとめます。

BlogPaintBlogPaint

①・②ができあがると、次はそれらを持ち寄って、グループでの話し合いです。
同じような根拠を挙げている人もいれば、自分とは違った観点でテーマをとらえている人が
いることに、子供たちは気づきます。
ワイワイと話し合いをしているチームもあれば、何やら真剣に話し合っているチームをあり、
見ているだけでこちらがわくわくするような学びあいが展開されています。

BlogPaintBlogPaint

BlogPaintBlogPaint

それらの話し合いが一段落したタイミングで、教師が各立場6名ずつを指名し、
サンプルディベートを行います。
サンプルディベートとは、一応のフォーマットに従ってディベートマッチ進めながらも、
途中途中で試合を止め、指導をしていくディベートです。〈わたしの勝手な名付けです〉

ディベートはテキストで学ぶよりも、実践を通して学んで行った方が効果的です。
その意味で、サンプルディベートは有効な手段だと考えています。

BlogPaintBlogPaint


一連の全体指導は約半日かけて行います。
午後からは、今度はクラス単位でディベートに取り組みます。

クラスでは論題の決定からはじめ、最終的なディベート・マッチまで仕上げることが
求められています。

とはいっても、指導する担任は、国語の教員ばかりではありません。
今年のS類1学年スタッフは国語・数学・英語・理科・地歴公民が各1名ずつです。
もちろんすべての教員がディベート指導に長けているというわけでもありません。

しかし、ここでは教員のディベート指導力はあまり問題にはなりません。
なぜなら、教員に求められていることは、生徒たちが伸び伸びとディベートをすることが
できる環境を作ることだからです。

ディベートの導入期では、教師が先頭に立って指導力を発揮するよりも、生徒たちが
自分たちの意思でディベートを経験していくことの方がはるかに重要です。

我がクラスの生徒たちが一体どんなテーマを持ち出してくるのか、担任はハラハラしながらも、
平静を装って見ていれば良いのです。

最終日には、各クラスの代表がみんなの前でディベートを行います。

スプリングセミナー①


S類のスタート行事であるスプリングセミナーが無事終了しました。

この企画はS類生全学年が参加する、S類伝統の宿泊行事です。
学年ごとに目的は異なりますが、先輩、後輩とが一緒に合宿することで
お互いの活動を意識しながら、それぞれの「学年の役割」を自覚していくことができる
行事になっています。

開智学園では小学校から入学してくる児童たちが集う総合部がありますが、そこでの
先進的な教育スタイルに「異学年齢学級」というものがあります。そのシステムの教育効果を
高等学校でも実現しているのが、このスプリングセミナーなのです。

******************************************************************************

合宿地である箱根に到着すると、早速開校式が行われます。
はじめに校長先生から、お話を伺います。

CIMG2665BlogPaint

開校式のあとは、学年に分かれての活動になります。

3年生は「勉強合宿」が中心的な目的ですので、早速講座に向かいます。

1年生は、いわゆる高校生活ガイダンスを目的とし、プログラムが組まれていますが、
単に「開智高校での生活」をガイダンスすることを目的とはしていません。端的に言えば
「S類生になる」ことが、この合宿の最大の目的であるといえます。

そのスタートとして、S類2年生が1年生に校歌を教えます。楽器などありませんので、
2年生は自分たちで歌いながら、教えていきます。
2年生の各クラスには、1年生のクラスがそれぞれ分担されています。1年生は練習後に
クラスごとに校歌を発表しなければなりませんので、2年生はそれぞれ自分が担当している
クラスが上手に発表できるように、一生懸命に教えています。

BlogPaintBlogPaint

校歌練習の後には、それぞれのチームの中でのフリートークの時間があります。
ここでは2年生から1年生に向けて、「S類生としてのお作法」などが伝えられたりします。

また、1年生も先輩にいろいろな質問をします。なかなか先生には聞きにくいことや、
S類のあれこれについて、先輩に尋ねているようです。
合唱練習を含めて、この時間はわれわれ教師は生徒たちには近づかないようにしています。
特に、このフリートークの時間は、教師が近くにいると話しにくいことなども話されているよう
ですので、極力離れています。
(何が話されているのか、聞きたい気持ちはやまやまなのですが…)

プロフィール

2000年度より開智学園の教育理念を具現化するための新教育システムの構築に取り組み、2005年度に「S類」をスタートさせる。独自に開発した【S類メソッド】の柱の一つに『論理エンジン』を位置づけ、3つの力(論理的思考力、判断力、表現力)の総合体としての「智力」の育成に大きな成果を上げている。また、独自の理論に基づく「ソーシャル・スキルの育成」も人間力の向上に大きな効果をもたらしている。 趣味はギター。

カテゴリ