2012年02月

『論理エンジン』とS類

本日は関西からO高等学校の先生がお見えになりました。
14日のI高等学校に続き、今月2校目のご来校です。

O高校はすでに『論理エンジン』を導入し、成果をあげていらっしゃる、関西における「論理エンジン先進校」です。

本日のご来校の目的は、

①本校での『論理エンジン』指導の実際を見学したい。
②S類の導入によって大きく変わった、開智高校の「改革の足跡」を確認したい。

以上、2点です。

13時30分に到着された先生方を、打ち合わせもそこそこに、早速授業にご案内しました。
授業は1年生の『論理エンジン』。担当は森澤教諭です。

時間の都合で授業開始20分後からの参観となってしまいました。
教室では、生徒たちが問題に取り組んでいます。森澤教諭は机間指導をしながら、数名の生徒に対して「自分の答え」を黒板に書くように指示を与えていきます。
O高校の先生方にもできるだけ近いところで、生徒の学習の様子をご覧いただきました。

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指名された生徒たちが黒板に書いた答えについて、まずは個人個人で、次に近くの者同士で相談させながら、丁寧に分析させていきます。森澤流「論理エンジン指導法」が光ります。

ある程度の方向性が出てきた段階で、本格的な「学びあい」に移行させていきます。

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授業参観のあとは、施設の見学にご案内しました。
自習室や宿泊学習棟など、参考にしていただけた施設が多くあったようです。

そして最後は懇談です。
はじめに開智高校の簡単な歴史をご紹介した後、質疑応答形式でいろいろな話題についてお話しさせていただきました。

特に話題が集中したのは、「S類を核とした学校改革」についてです。

今から約10年前に、私の頭の中で構想をスタートさせたS類について、改めていろいろお話していく中で、私自身がここ1・2年でブレてしまったことがあることに気付くこともありました。
O高校の先生には、その「ブレ」はもちろんわからないわけですが、私自身、心の中でハッとすることがいくつかあり、今日のご訪問のおかげで、もう一度「S類コンセプト」を見直し、「S類メソッド」をさらに発展させるきっかけをいただくことができました。

今回のご訪問で、S類での取り組みが果たしてO高校の先生方のご参考になれたのかどうか心もとない限りですが、お互いに良い刺激を与えることができたことは確かなようです。

次は私がO高校を訪問させていただくことをお約束し、お見送りいたしました。
O高校の先生方、本日はありがとうございました。

入学予定者登校日です

今日は4月に開智に入学する予定のみなさんたちの登校日です。

開智では入学手続きをした入学予定者を対象にして、開智生になるための準備を少しずつ始めます。
入学手続きをする時期は人によって異なりますが、それぞれの段階に応じて準備を始めるのが開智の特徴です。

今日参加をしている入学予定者のほとんどは2回目の登校日ですので、初対面ではないのですが、それでも入学前ということもあり、みんなとてもお行儀よくしています。

さて、今日は2つの講座を行い、前半を私が担当しました。

テーマは「クリティカルに思考しよう」です。

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今日登校してきた入学予定者に限らず、開智に入学してくる生徒は平均してとても「素直」な生徒が多いように感じます。おそらく教師や親の言うことをよく聞く子なのだとも思います。

一方で、彼らの気持ちのどこかに「そうしているのが一番楽だから」「言うことを聞いていれば、まあ何とかなるから」というような「消極的行動動機」があるのではないかという危惧もあります。

たしかに周りの大人の言うなりに行動していれば、大きく間違うことはないかもしれません。しかし、それでは主体性はいうまでもなく、行動力も判断力も思考力も育ちません。

開智では「人から指示されて行動する人間」を育てようとは思っていません。状況を判断し、自分の経験や知識にそれを照らして思考し、主体的に行動できる人間を育てようとしています。

そのためには、まず自分の周りに氾濫している情報(これには周囲の大人たちの意見ももちろん
含まれます)について「それは本当かな?」「先生の言っていることは正しいのかな?」と疑問を持つことから始める必要があります。


「クリティカルな思考」とは、そのまま訳すと「批判的な思考」ということになります。しかし「批判的」といっても、他人のアラ探しをするわけではありません。
例えば、私たちは、話相手が年長者であったり、偉かったりすると、その人の発言が正しく聞こえてしまうようなことがあります。しかし、もしかしたらその発言は間違っているかもしれません。良く考えてみると、発言内容そのものについて考えて「正しい」と判断したわけではなく、話し相手の年齢や社会的地位によって「正しい」と思い込んでしまっただけかもしれないのです。

開智で学ぶ生徒には「真実を見極めようとする姿勢」を身につけて欲しいと思っています。そのため、今回の入学予定者にも「クリティカルに思考しよう」というテーマでお話をし、いくつかのワークに取り組んでもらいました。
このワークは、4月から彼らが取り組む『思考ルート』と『論理エンジン』の学習ベースにもなる内容です。

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開智の学習ですから、私が一方的に話をするばかりでなく、当然のように「学びあい」があります。
とはいうものの、写真でお分かりなように会場が狭いため、なかなか十分な話し合いができませんでした。
それでも席の近いもの同士でいろいろと意見を交わしながら、考えを深めてくれたようです。

入学予定のみなさん、お疲れさまでした。
この後にも行われる講座を通して、1日も早く「開智生」になれるように、一緒に準備をしていきましょう。

論理エンジンの導入に向けて②

授業見学のあとは、Ⅰ高校の先生方との懇談です。
話題は主に2つ、

①論理エンジン導入にあたっての留意点。
②論理エンジンを指導していくうえでのポイント。

①については『論理エンジン』そのものをどう使っていくかということではなく、『論理エンジン』を導入することで、学校をどのように変えていくかという観点でのお話になりました。

S類ではまさに学校改革の強力なツールとして『論理エンジン』を導入しました。導入の経緯やその後の経過などはいろいろなところで紹介してきましたが、学校改革ツールとしての『論理エンジン』の機能は、ひと言でいえば「生徒の智力を開発することができる」という点につきます。

それまでの開智高校の生徒の多くは、とても「いい子」達でした。正確に言えば「言われたことはきちんとこなす、教師にとって都合のいい子」達でした。典型的な「受け身型人間」が多数を占めていたといえます。小学生のころから塾に通って「たった一つの正解」にたどり着くための訓練を積んできた「マシーン」としては当然の結果だったのかもしれません。

そんな生徒たちを前にして私が強く感じたことは、「自分の頭で、自分の言葉で、ものを考えなくなってしまった人間は、果たして社会で役に立つのだろうか。人材になりえるのだろうか」ということでした。そしてもう一つ感じたことは、「もしかしたらこの子たちは『ものの考え方』を知らないのかもしれない」ということでした。

そんな思いを持ちながら新類型の立ち上げをプランニングしていたときに出会ったのが『論理エンジン』だったのです。
導入にあたってはさまざまな障害もありましたし、現在でも解決すべき課題はたくさんあります。しかし、とにかくはじめの一歩を、信念を持って踏み出してみること、これが大切です。

と、以上のような話を質疑応答を挟みながら、させていただきました。
ブログという場では紹介できないような話もたくさん紹介しましたので、Ⅰ高校の先生方も臨場感をもって聞いていただけたようです。

②については対象とする生徒とその指導者によってかなり異なりますので、本校の事例を踏まえながらも、やや一般的な話をさせていただきました

『論理エンジン』は他の教材以上に、指導の成果が指導者のスキルに左右されてしまう教材です。そもそも『論理エンジン』は国語の教材ではなく、論理の教材ですから、国語科以外の教師でも十分に教えることができます。

しかし、誰が教えるにしても最低限必要とされるスキルがあります。それは「指導者自身の柔軟な思考力」です。

もちろん多彩で論理的な思考力をもっているのであれば、それはそれで構わないのですが、それがかえって邪魔になることもあります。『論理エンジン』の指導者に求められるのは、生徒が自由な発想を広げられる場を提供できる柔軟性、生徒の思考を受け止め、個に応じて、より良いアドバイスをすぐに返すことができるしなやかさなのです。

結論としては、ソーシャル・スキルの高い教師であれば、だれでも優れた「倫理エンジン指導者」になることができます。

という話をさせていただきました。『論理エンジン』の初めの方の内容(OS1)は、小学生レベルです。それを高校生に「指導」するわけです。高校生に高校生の国語を教えるのとはわけが違うことは、これだけでもわかっていただけるのではないでしょうか。

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このような話をしているうちに、お約束していた1時間はとうに過ぎ、すでに5時近くになってしまっています。
Ⅰ高校の先生方、遅くまでお引止めいたしまして、申し訳ございませんでした。

今回ご訪問いただいたことで、私もたくさんのことを発見することができました。
心より、御礼申し上げます。 ありがとうございました。

論理エンジンの導入に向けて①

私立大学の入学試験もいよいよ佳境に入ってきました。
今週はS類生のほとんどが受験に向かうため、直前講習の参加者もまばらです。

さて、本日は東北地方の私立進学校であるⅠ高校の先生方が本校を訪ねてくださいました。
Ⅰ高校の先生方は、昨年秋に実施した論理エンジン東京研修会に参加をしてくださり、
研修会終了後に本校訪問の打診をいただき、本日のご訪問となりました。

現在、論理エンジンの導入を検討されているⅠ高校では、論理エンジンを国語の教材としてだけではなく、全教科横断型の論理力向上教材ととらえていらっしゃり、さらに、学校改革のツールとして導入を検討されています。
この考え方が、【S類メソッド】と重なる部分が多いとのことで、現場を見学に来られたのです。

先生方は午後1時に到着され、打ち合わせもそこそこに、早速論理エンジンの授業を見学していただきました。

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授業は1年生。教材はOS3です。
授業を担当されているのは論理エンジンの指導経験が豊富な森澤教諭です。

段落の要点をまとめるのが本時のめあてとなっており、最初の問題に取り組ませます。
机間指導をしながら、次々と生徒を指名し、指名された生徒は、黒板に、自分でまとめた要約を
書いていきます。

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7人指名したところで、書かれた要約の特徴を簡単に構造化し、生徒に提示します。
そして生徒たちに発問します。

「ここに挙げてもらった答えの中で、グループ化できるものはどれだろうか。」

この発問は論理的思考力を高めるためにとても効果的な発問であり、
授業のクオリティの高さがうかがわれます。
もしもこのときに

「この中で一番良い答えはどれだろうか。」

と発問してしまったとすると、ここでの論理エンジンの取り組みは台無しになってしまいます。

「それぞれの答案を、観点をもって検証することで、それらの共通点を見出していくこと」

この思考ルートをたどらせようという
指導上の観点がしっかりしているからこそ、
論理エンジンが教材として真価を発揮しているのです。

Ⅰ高校の先生方も熱心に参観されています。

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授業の後半は、S類の授業ではおなじみの「学びあい」です。
先ほどの問題の後、生徒たちはさらに数題の問題に取り組み、それぞれが作った答えを
見比べあって、「なぜそのような答えにしたのか」ということを発表しあいます。

この学びあいの中で生徒たちは「自分以外の」思考ルートを多く体験することになります。
この経験は、「一人」の教師が「一つ」のルートを示すよりも、はるかに高い学習効果を
生徒たちにもたらします。

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あっという間の50分か過ぎてしまいました。

授業参観のあとは、場所を移してⅠ高校の先生方からいろいろな話を伺いました。
その模様は次回お話しいたします。
プロフィール

2000年度より開智学園の教育理念を具現化するための新教育システムの構築に取り組み、2005年度に「S類」をスタートさせる。独自に開発した【S類メソッド】の柱の一つに『論理エンジン』を位置づけ、3つの力(論理的思考力、判断力、表現力)の総合体としての「智力」の育成に大きな成果を上げている。また、独自の理論に基づく「ソーシャル・スキルの育成」も人間力の向上に大きな効果をもたらしている。 趣味はギター。

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