2011年11月

内の日本語、外の日本語

いよいよセンター試験まで残すところ1か月余り。生徒諸君の表情にも
緊張感がみなぎっています。

思いのほか暖かかった11月も、ここにきて一気に冷え込み始め、体調を崩す生徒が
出てこないか気がかりな毎日ですが、
どの生徒も十分に用心して体調管理を行っているからなのか、それともウィルスさえも
逃げ出す気迫のせいなのか、
今のところ大きく体調を崩す生徒も出ておらず、ひと安心しています。

私が現代文を担当している理系1クラス、文系1クラスの生徒の多くは、最難関国立大学を
第1志望校としているため、センター試験の準備と2次記述の学習とを並行してこなして
いかなくてはなりません。

今年に限らず、本校の現役生の場合、この時期に十分な記述解答力を身につけている
生徒は皆無といってよく、記述解答の練習をしているとかえって自信を無くしてしまう
生徒も出てきます。

彼らのつくる答案は、授業レベルでは十分に評価できる内容なのですが、
最難関大学の基準で採点してみるとどうしても甘い。
この甘さというのは、読解の甘さというより、表現の甘さです。答案にとどめがさせていない。
本文中から、答案の根拠となる言葉は読み上げられていても、それが「力のある答案」として
まとめあげられていないのです。

本文の読解はできるのに、答案としての表現ができない、その原因はたった一つです。
読解のときには論理エンジンで学んだいくつものポイントを駆使できるにもかかわらず、
読み取った内容を設問の要求に合わせて表現する段階になると、「日常生活で困らないレベル
の日本語」を使ってしまうこと。これが原因です。

文章(試験問題の本文)は「自分の外」にありますから、それを対象化して、客観的に、
論理的に読んでいくことは、基本をきっちり学んでいけばさほど難しいことではありません。

しかし、読み取ったものを自分の言葉で表現するときには、表現ツールである言葉そのものが
「自分の内」にあるため、強い意図を持って表現していこうとしなければ、
瞬く間に「なじんだ言葉」「なじんだ論理」で書いてしまうのです。

「論理的に読むこと」と「論理的に書くこと・話すこと」との間にある壁は、思った以上に高いものです。

これから、その壁を乗り越える、彼らの戦いが始まります。

しかし、恐れる必要はありません。

まもなく彼らは、授業で論理的表現ルートに出会うことになります。
この思考ルートを的確にたどることで、
先輩たちと同じように彼らもこの壁を確実に乗り越えていけるのですから。

ちょっとそれますが(続き)

前回ご紹介した詩は、詩人「ゆきやなぎ れい」さんの作品です。
詩集『うたを うたって あげたい』の中に収められています。

この詩集『うたを うたって あげたい』の中のいくつかの詩に、
作曲家の萩原英彦さんが曲を付けた合唱組曲『深き淵より』という作品が
あります。

私は高校時代は男声合唱団、大学では混声合唱団に入っていたのですが、
大学3年生の時の定期演奏会のメインステージで歌うことになったのが
『深き淵より』でした。そしてそのとき初めて、彼女の詩と出会ったのです。

夜ふけの珈琲(コーヒー)のかおり」は、その3曲目。
明るいトーンの短い曲です。

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ゆきやなぎれいさんは盲目の詩人です。

『深き淵より』の1曲目「想い出になりきれない想い出」は次のように始まります。

   時という流れをくだり
   忘
却の門をくぐり
   たくさんの記憶は
   想い出にそまって
   こころの滝壺に落ちる

「記憶」 … 私たちが持っている「記憶」はどのようなものでしょう。

ゆきやなぎれいさんは、自分の記憶について次のように語っています。


私の詩は<私の耳が持っている記憶>とでもいうものです。


色を見ることができない彼女は、仔犬の体温や湿り気、そしてそのにおいから

   きっと あなたはこげ茶色ね

と感じます。
学生時代と同様に、この感性には今も心うたれます。

耳が持っている記憶、においで感じた記憶。
たくさんの記憶が彼女を包みます。

私たちは毎日多くの記憶を、その想い出とともに心にしまっていきます。
そしてその記憶は、あるときふと心の表面に顔を出します。
想い出という名前で。

私たちの記憶と彼女の記憶とは、恐らく違う。
そして、想い出になりきれない想い出…。

とてもやさしいことばでつづられている彼女の世界です。しかし、

簡単には踏み込めない深さと厳しさとを、感じずにはいられません。


『深き淵より』の最終曲の詩を最後に紹介します。
実は、この詩はゆきやなぎれいさんの詩集に収められているものとはずいぶん違っています。

私は曲の方に先に出会い、あとから詩集を読みました。

内容的には正反対ともいえるほどの変更が加えられており、かなりの違和感を覚えました。

そのことについて賛否を論じるつもりはありません。

今回は組曲『深き淵より』の中の詩のほうを紹介したいと思います。


  「うたを うたって あげたい」

   うたを うたって あげたい
   ひくく ちいさく そして やさしいこえで
      あなたの すきな
      山のうたを
      あなたの目には
      見ることのできない
      この葉の色と 小鳥の姿を

   うたを うたって ください

   ひくく ちいさく そして やさしいこえで

      わたしの すきな

      海のうたを

      わたしの目には

      見ることのできない

      波の色と 貝のかたちを

   うたを うたい うたを うたう

   ひくく ちいさく そして やさしいこえで

      あなたの目にも

      わたしの目にも

      だれの目にも みることの できない

      人の心の

      かなしみや よろこびを

      うつくしい ふしに のせて

ゆきやなぎれいさんの心の世界に、ふれてみてください。

ちょっとそれますが…

いままで、授業の様子や行事のことなどを書いてきましたが、
今回は、そこから少し外れてみたいと思います。


  夜ふけの珈琲(コーヒー)のかおり


   両手に包んで持ちあげると

   それは珈琲(コーヒー)のようなにおいがした

   もっと顔を近づけてかいでみると

   しめったいのちの風が私にふれて

   それは珈琲からたちのぼる湯気のようだった


   きっと あなたはこげ茶色ね


   夜ふけの道でひろった仔犬を胸にだいて

   私はそう思った


これは、私が好きなある詩人の詩です。
そして合唱曲としても うたわれている詩なのですが、

みなさんはこの詩を読んで、どのような情景を思い描かれるでしょうか?

 

 

 

ディベート③

今日はディベートマッチを行います。
1時間目には予選を行い、2時間目が本戦です。

肯定派3グループ、否定派3グループの編成になっていますので
予選は3試合行います。

今回のフォーマットは1試合25分かかりますので、予選は簡易版で実施します。
各派、立論を2分で行い、そのあと5分間の論戦を行いました。

初めにディベートマッチの流れを確認し、グループごとに最後の作戦を練ります。

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予選開始です。予選の組み合わせはくじで決定し、司会は私が行いました。
どのグループともしっかりした立論を述べています。

各対戦の後では、それぞれの良かったところと、再検討できるところを指導します。

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3組の対戦が終了すると、本戦出場グループの選出です。
選出方法は、優秀と思う1グループに挙手をする形で行いました。
また、司会者とTKは推薦によって選出しました。

このあと10分間の休み時間を挟んでいよいよ本戦です。

本戦に先立ってジャッジ・シートの記入の仕方について確認します。
根拠に基づいて論理立ててジャッジする力を身につけることもも、ディベート学習の
大きな目的です。

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今回の試合結果は「否定派」が勝利を収めましたが、双方とも予選での問題点を
短時間であったにもかかわらず、よく修正しており、立派なディベートマッチだった
と思います。特に立論は、予選以上に優れたものに仕上がっていました。

一方で、質疑応答や論戦では、相手の主張の核心をとらえる瞬発的な思考力が
まだまだ十分でなく、試合後の反省会でも、各ディベーターからそのあたりのことが
いくつも出されました。
この点は生徒たちの学習課題であると同時に、指導する私の課題でもあります。

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前々回のこのブログでも書きましたが、ディベートは総合的な言語力・思考力を
育成するのにうってつけの教材です。
特に本校は「国際社会に貢献する、心豊かな人材の育成」を目指していますので、
その観点からも、ディベート指導は極めて重要であると考えています。

ディベートの指導はどうしても時間がかかりますし、指導する教師にも相応の
スキルが求められます。それらの意味で、実際の授業にはなかなか取り入れられて
いないのが現状です。
しかし、ディベートの教育効果を考えると、やはり学期に1回くらいは実施したい
と考えています。そして、それらの学習を通して、多くの高校生が論理的思考力と
表現力、さらにソーシャル・スキルを高めていってくれたらと考えています。

ディベート②

今回からはスポット授業の様子をレポートします。

今回の授業の対象となる生徒は2年生の理系1クラスと文系1クラス。
この2クラスの合併授業です。
生徒たちは入学直後の合宿で集中的にディベート指導を受け、
2学期にもう一度ディベートの学習をしています。
2年生になってからは、なかなか学習の時間が取れなかったため、
今回のスポット学習となりました。

授業は11月16日(水)の5・6時間目と、18日(金)の1・2時間目の
合計4時間です。

論題(テーマ)についてはあらかじめいくつかを提示し、それぞれについて
「自分としてはどちらの立場をとるか」のアンケートを実施し、
最も票が割れたものを採用しました。提示した論題は以下の通りです。

①日本は高等学校を義務教育化すべきである。
②日本は医療行為としての安楽死を合法化すべきである。
③日本は犯罪者および犯罪被害者の実名報道を禁止すべきである。
④日本は英語を第2公用語とすべきである。
⑤日本は首相公選制を導入すべきである。
⑥日本は義務投票制を導入すべきである。

今回は価値論題よりも、よりディベータブルな政策論題を中心に提示し、
結果として最も票が割れたのが
⑥日本は義務投票制を導入すべきである。
でした。

ディベートを行う際には自分が賛否どちらの立場を主張することになるかは
自分の考えとは全く無関係に抽選などで決まるわけですが、集団の方向性が
出てしまっているテーマは迫力に欠けますので、今回のように事前調査を
してから論題を決定するのも良いと個人的には考えています。

さて、授業の進め方ですが、おおむね以下のように考えました。
  
  ・第1時間目 ・ディベートの定義とルールの再確認
         ・テーマ分析
                 ・グループ編成(立場ごとに3G、計6G:抽選)
  ・第2時間目  ・情報カードの作成・整理
                 ・立論の集約と、根拠の洗い出し
                 ・シートの作成
    ・第3時間目  ・簡易ディベートの実施(予選)
                 ・本戦のディベーターの選出(司会・TK含む)
                 ・作戦の練り込み
    ・第4時間目  ・ディベートマッチ
                 ・自己評価と相互評価 / 講評


【第1時間目】

 まずはディベートの定義からおさらいし、作法のふり返りです。
 すでに学習した内容ですので、レジュメを使って簡潔に扱います。

 次に「テーマ分析」です。このテーマ分析が甘いと生徒たちの思考が拡散し、
 質の高い話し合いが成立しません。ひいてはディベートマッチの質そのものが
 低下してしまいます。
  
 (ディベートの指導がなかなかうまくいかないと感じられている先生は、
  おそらくこの部分の指導がうまくいっていないのかもしれません。)

 テーマ分析の方法はテーマによっていろいろありますが、オーソドックスなのは
 「テーマの内容をパーツに分けて、各パーツの対立軸をもとに定義する」
 という方法です。

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テーマ分析が終わると、グループ編成です。今回は時間を短縮するため、あらかじめ
生徒を出席番号順に着席させ、その座席に従って私がグループを編成し、肯定・否定の
立場も決めました。

【第2時間目】

この時間はグループ活動です。S類の生徒たちは日常的に学びあい学習をしているため、
このような活動はお手の物といった感じです。
それぞれが調べてきた情報をもとに、活発な話し合いが行われています。

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各グループの「情報カード」の整理具合を確認し、「立論シート」「反論シート」を
配布します。あわせて役割分担をするように、指示をしておきます。

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各グループとも立論がまとまったあたりでチャイムが鳴ってしまいました。
残念ながらディベートマッチをいかに優位に進めるかの作戦を練るところまでは
どのグループも行き着いていません。

予選は明後日の1時間目です。各グループとも中一日でどのように仕上げてくるか
楽しみです。

ディベート①

今週は、ディベートのスポット授業(4時間)を行いました。

そこで、
この機会にこのブログでも数回に分けて「ディベート」を
取り上げたいと思います。

第1回目の今回は「高校で行うディベート指導」について総論的に扱ってみます。


(1)ディベートの歴史

  ディベートの歴史は非常に古く、教育ディベートに限ってみても、ヨーロッパや
 中国では約3000年前から行われていた記録が残っています。
  日本におけるディベートも古くから実施されていましたが、当時のディベートは
 主に大学生が英語によって行うものが多く、現在のように中学生や高校生が日本語
 でディベートを行うようになったのはごく最近、1990年代に入ってからのことだと
 思います。


(2)学校でのディベート

  開智高校の入学してきた生徒たちも、多くは「ディベート」という言葉を知って
 いますし、実際にディベートを行った経験を持っている人もたくさんいますが、
 その経験内容には大きな差があるようです。
 多くの生徒が経験しているのはディベートと名付けられた「ディスカッション」
 あるいは「テーマ討論」のようなものであるようです。
 
 そうなってしまう原因は次の2点であると私は考えています。

  ・中学生には本格的なディベートはまだ難しいと、指導者(先生)が
   思い込んでしまっている。

  ・指導する先生自身がディベートについて実はよく知らない。

   (①・②ともに深刻なイシューを持ったテーマですが、このブログで扱う
    話題としては重たすぎますので割愛します。)


  学校で行うディベートを「教育ディベート」と呼びます。
  教育ディベートは現実社会に何らかの影響を与える実質的なディベート(米国
 大統領候補者の討論会や、日本の党首討論、裁判など)とは異なり、現実社会への
 影響を意図しない形式的ディベートです。
 
 教育ディベートの目的はいくつもありますが、ざっくりまとめてしまうと
 「論理的思考力を育てる」ということになると思います。ディベートが国語(現代文)
 学習の枠を超えて「総合的な学力育成」の題材と呼ばれる理由がここにあります。
 
 開智高校S類ではこれに加えて「ソーシャル・スキルの向上」も大きな柱として
 位置づけています。


(3)ディベート学習のステップ

  ① 論題(テーマ)を分析し、必要な情報を集める。
  ② 情報を整理し、自分の立場からの論理を構築する。
  ③ 他派の主張を想定しながら、ディベートマッチ全体を構造化する。
  ④ ディベートマッチを実施する。
  ⑤ ディベートマッチを振り返り、うまくできた点と、もう少し努力できた
    点をまとめる。

   ディベートは総合的な学習題材ですので、細かく説明していけばきりがないの
  ですが、私は大きく以上の5ステップで指導しています。

   なかでも特に初心者に対して指導する際に私が重視していることは、
  ④における「聞く姿勢」についてです。
   もちろん、これが一番大切だからというわけではありません。情報を集め、分析
  することも、立論をしっかり構築することも、それを明快に述べることも、
  みな重要です。
   で
は、なぜ「聞く姿勢」を重要視するのかというと、それが学習する高校生にも、
  また指導する先生にも「最も見落とされやすい」点であるからなのです。


(4)論理的思考力とソーシャル・スキル

   ディベート学習の中では、どうしても「ディベートマッチ」が焦点化されやすく、
  とりわけ「どれだけ理論的に主張できたか」という「発信」面がクローズアップ
  されがちです。特に初心者のディベートではこの傾向が強く見られます。

   た
しかにディベートマッチにおいて「論理的に自分の考えを主張する」ことは
  大切です。しかし、それさえできればよいということではありません。

   ディベートマッチは「自分とは相対する考えを持った人とのコミュニケーション」
  のなかで行われます。この構造というのは我々大人も、また高校生も、日常生活の中
  でしばしば体験する構造です。
   私たちは一人で生きているわけではなく、社会の一員として生きています。
  社会の中で生きるということは、他人とのコミュニケーションの中で生きるという
  ことにほかなりません。
   そのような環境の中では、いかに自分の意見(主張)が論理的であったとしても、
  主張する人間が、相手の話に耳を傾ける姿勢を持つことができていなかったと
  すれば、その意見は決して相手に届くことはないでしょう。


   ディベートの指導を通して、生徒たちには「論理的な思考力」「判断力」
  「表現力」を身につけてもらいたいわけですが、それが独善的なものであったと
  すれば、それらの力は社会に出てからなんの力も持たないばかりか、
  かえって人間関係に大きな弊害をもたらすものとなるでしょう。

   ディベートを通して育てたい力とは「理屈を振り回して、相手を黙らせる力」
  ではありません。
  「相対する立場に立つ人間同士が、質の高いコミュニケーションをすること通して、
  真理を追求していこうとする力」であると、私は考えています。


  さて、次回からは実際の授業の様子をお伝えしていこうと思います。

SCIENCE LABO

今日はお台場にある日本科学未来館でのSCIENCE LABOです。

この企画はS類1年生の、いわば科学遠足なのですが、学習としては
Contemporary issuesの1プログラムとして位置づけられています。
また、間近に迫った、次年度の文理選択にも役立つ企画となっています。

朝9時半過ぎに生徒たちは直接現地に集合します。最寄駅はゆりかもめの
テレコムセンターですが、多くの生徒はりんかい線の東京テレポートを利用します。
東京テレポートの駅を出て、フジテレビを背にして歩くこと約10分。
日本科学未来館に到着します。非常に大きい建物ですので遠くからでもすぐわかります。
(隣がフジテレビの巨大な湾岸スタジオなので、あまり大きさの実感はわきませんが…)

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今日は開智のほかにも、いくつかの高校や中学校の生徒たちがが学習にきていました。

10時になり、いよいよ入館です。
生徒たちはあらかじめ3~4名でグループを編成していますが、このグループは
(あとで触れますが)プレゼンテーションのためのグループです。
館内ではグループで研修してもよいのですが、何を見たいのか、どんな研究をしたい
のかは一人ひとり異なりますので、原則としては個人研修になります。

個人研修ではひと通り見学した後で、特に自分が研究したいテーマについて掘り下げて
いきます。
生徒たちにはあらかじめ研究のためのシートを配布してあり、このシートに記入しながら
研究を進めます。

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この時に頼りになるのが「インタープリター」と呼ばれる、日本科学未来館の研究員の
方々です。

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それぞれの展示ブースにはこのインタープリターの方がいらっしゃり、質問に応じてくれます。
その分野の専門家ですので、知識はもちろん、研究実績も豊富です。
小中高生ばかりでなく、大学院で研究している学生や、企業で研究・開発をしている人も
この日本科学未来館を訪れるという理由がよくわかります。
とはいっても高校生相手に難解な説明をするというのでは、もちろんありません。
高校生には高校生が理解できるようにわかりやすく説明してくれます。

また、インタープリター以外にもボランティアとよばれる専門家のみなさんがいらっしゃいます。
この方たちは日本科学未来館以外のところで活動されていたり、かつて第1線で研究され、
現在は後進の指導に当たっておられる方などです。

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個人研修が終わると、グループごとに集合し、プレゼンテーションに移ります。
ここでは、ここまでに自分が研究した内容を、そのブースの前で班員にプレゼンします。
プレゼンの前は、プレゼンシートの最終仕上げです。
班員だけでなく、一般の方が一緒に聞いていることもあるのでちょっと緊張しますが、
発信力を磨くためには絶好の機会となります。

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このようにして、約4時間にわたる研修が無事終了しました。

日本科学未来館を訪れるのは今回が初めてではないという生徒も多数いましたが、
今回は展示を「見る」ためではなく、「自分でテーマを見つけ、研究し、発表する」
ための来館であったため、目に映るものも随分と違って見えたようです。

Contemporary issues 現地高校生との交流②

午前のプログラムが終わると、ランチタイムです。
ランチは学校のカフェテリアで楽しみます。

ペアになった生徒以外の生徒たちも一緒なので、カフェの中は大騒ぎです。
ペイント・ブランチの生徒たちは非常にフレンドリーなので、S類の生徒たちは
おされ気味です。

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ランチのあとは、再びペアで活動します。美術のクラスに参加する生徒もいれば
メディア論の授業に参加する生徒もいます。
日本と同じ科目もあれば、日本では考えられない科目もあり、生徒たちの反応も様々です。

生徒:「先生、数学は日本の方がかなり難しいことやってますよ~」
教師:「じゃあ、教えてあげたら? 英語で。」
生徒:「…」

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楽しく、充実した時間は、あっという間に過ぎてしまいます。

最後はフェアウェル・セレモニーです。
ペイント・ブランチの生徒たちが日本語で歌を歌ってくれたり、チア・リーディングを
見せてくれたり、バンド演奏をしてくれたりしました。
S類生も、知っている歌を一緒に歌い、最後にスピーチをして、いよいよお別れです。

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外に出て、迎えのバスが来るまでの間、一緒に写真を撮ったり、メールアドレスを
交換したりしながら、名残惜しい時間を過ごしました。

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……さて、Contemporary issuesの記事も、ずいぶんと長くなってしまいました。

生徒たちはこの後も、ワシントンD.C.での市内研修や、ペンタゴン・モールでの食事など、
いくつものプログラムを体験しているのですが、それらは割愛いたします。

最終日は午前2時30分に起床し、経由地のヒューストンまで約3時間、ヒューストンから
成田まで約14時間のフライトを経て、成田に到着します。
かなり疲れていると思われるのですが、アメリカでの様々な体験の余韻が残っているのか、
みんなとてもいい顔をしています。

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「高校生にはもったいない行事だ」
そのような評価も、当初は確かにあったこのContemporary issues米国研修ですが、
回を重ねるごとに、
「高校生の、この時期でなければできない体験がある」
ことを、私は強く実感しています。

この米国研修が、単に論文を書くための研修旅行ではなく、それ以上の貴重な体験が
一人ひとりのS類生に、確実にもたらされていると、今年も感じさせられた一週間でした。

Contemporary issues 現地高校生との交流①

アメリカ合衆国研修の最終日は待ちに待った現地の高校生との交流です。

S類ではCIスタート時よりメリーランド州の教育委員会からこの企画について
全面的なバックアップをいただいており、訪問させていただいた高等学校も
すでに6校を数えるようになりました。

今年度は、2つの高校にお邪魔してきました。
1校は、今回が3年連続3回目の訪問となる「Mongomery Blair High School」。
もう1校は、今年度初めて訪問する「Paint Branch High School」です。
ともにメリーランド州の公立高校で、いわゆるエリート養成学校的な存在です。

「Mongomery Blair High School」は、特に数学、科学、コンピュータ・サイエンスなどの
理系分野と、ジャーナリズム分野に力を入れている学校で、全米での数々の賞を受賞
している高校です。

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「Paint Branch High School」は、特にメディア(新聞・放送関係)に力を入れており、
映画プロデューサーやアナウンサー、あるいは小説家などを多数輩出しています。
また、インターンシップ制度がとても充実している高校です。

S類生は2つのグループに分かれ、それぞれの高校を訪問させていただきました。

私は昨年ブレアにお邪魔しているので、今年度はペイント・ブランチにお邪魔しました。

初めに校長先生よりご挨拶をいただき、そのあとで日米双方の生徒の代表が
挨拶をします。
S類の生徒は英語での、ペイント・ブランチの生徒は日本語でのスピーチです。
両方の生徒ともあまりにも流暢な「外国語」をそれぞれ話しており、
かなり驚かされました。

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この後は、お互いにドキドキの「ペア・アレンジ」です。
男女別にアレンジしますが、誰とペアになるかは「偶然」です。それぞれが列になって
組み合わさっていくので、「その時」にならなければ相手がわからないのです。

S類の生徒も、ペイント・ブランチの生徒も、ほとんどの生徒が同年代の外国の生徒と
話をすることが初めてなので、かなりぎこちない対面です。

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アレンジが済んだペアは、それぞれペイント・ブランチの生徒の授業クラスへ行ったり、
校内見学に行ったりします。この時間以降の活動は原則として生徒同士が話し合って、
自分たちで決めるようにしてあるのです。

(つづく)

プロフィール

2000年度より開智学園の教育理念を具現化するための新教育システムの構築に取り組み、2005年度に「S類」をスタートさせる。独自に開発した【S類メソッド】の柱の一つに『論理エンジン』を位置づけ、3つの力(論理的思考力、判断力、表現力)の総合体としての「智力」の育成に大きな成果を上げている。また、独自の理論に基づく「ソーシャル・スキルの育成」も人間力の向上に大きな効果をもたらしている。 趣味はギター。

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