Contemporary issues

Contemporary issues(CI)というのは、開智高校S類の教育理念を創っている
大きな2本柱のうちの1本です。

もう1本の柱、『論理エンジン』とともに
「国際社会で貢献できる論理的思考力、判断力、表現力、そして創造力を身につけた人材」
を育成するために欠かすことのできない教育活動になっています。

CIは約2年間にわたる大きな企画です。
企画全体は概ね次のようなステップで進行していきます。

① 一人ひとりが現代社会が抱えるさまざまな課題について広く観察し、
② その中から自分が研究してみたいテーマを一つ決めます。
③ そのテーマについて、いろいろな角度から自分なりに切り込み、
④ 必要な情報を集めます。
⑤ 集めた情報を選択・統合しながら
⑥ テーマに対する自分なりの視座を決め、
⑦ そのテーマが抱えている問題点をより具体的に抽出します。
⑧ そして、その問題を解決するための仮説を、論理的に構築します。
⑨ さらに、⑦・⑧について、現代の国際社会において良くも悪くも影響力の大きい
  アメリカ合衆国に行き、そこで自分の研究課題がどのようにとらえられているか
  を調査します。
⑩ 最後に、⑨での現地研修の結果を踏まえながら、課題解決のための提言をまとめます。

テーマの取り出し方には生徒の個性が非常に強く表れ、ごく身近なことを考察する
生徒もいれば、大きなテーマ(時間的、地理的、範疇的…)に取り組む生徒もいます。
切り口もいろいろで、通りいっぺんの切り口で満足してしまう生徒もいれば、
キラッと光る切り口を見せる生徒もいます。
仮説も実現可能性の高い路線を追いかける生徒もいれば、「夢」に近いような仮説を
立てる生徒もいて、とにかく「個性が出る」企画です。

多くの生徒が中学卒業までは、「正解にたどりつくこと」が「学習」であると思い込んで
(思い込まされて)来ていますので、「正解などない」学習には大いに戸惑うようです。

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学校を卒業し、社会に出れば「正解がある課題」など存在しないにもかかわらず、学校では
「正解にたどり着くこと」「『正解』を追い求めること」を生徒に強要し、生徒もそれを
さも当たり前のことのように受け入れます。

しかし、この状態で高校を卒業してしまった生徒は、言い換えれば、この状態で18歳に
なってしまった人間は、社会でどれほどの仕事ができるのでしょうか。社会にどのような
貢献ができるのでしょうか。
社会は、あるいはそれを構成している人間は「製品」ではありません。
社会も人間も生きています。だからこそ、そこには唯一絶対の正解などおそらく存在
しないでしょう。 存在するのは「より良く~」という視点だと私は考えています。

「より良い人間社会を創造することができる人材を育てたい」
私のこの思いがCIには強く反映しています。


明日、20日から一週間、生徒たちと一緒にアメリカ合衆国に行ってきます。(⑨)
テキサス州(ヒューストン)とワシントンD.C.での研修です。
現地の高校との交流プログラムなどもあり、盛りだくさんですが、S類生一人ひとりが
大いに楽しく、大いに興味深い時間を過ごすことができるように、万全のサポートを
してくるつもりです。

現地での様子については、戻ってきましたらこの場でご紹介したいと思います。

学びあい【理科】②

(授業者) 今見ている絵は渦巻ではなく、同心円が描かれているのですが、
      どうして渦巻に見えるのでしょうね。その理由を話し合ってみましょう。

生徒たちはいろいろと自分の考えを述べあっています。

「白黒だからじゃないか」
「円を描いている線の太さが内側ほど狭くなってるよね』
「後ろのひし形っぽいのが怪しい」 …

この授業の目的は「正解を知る」ことではなく、現象を体験することで、
現象の起こる理由を考察することにありますから、授業者がこの段階で
生徒を誘導する必要はありません。

続いて、次のシートが配られます。
このタイプのシートは数種類用意されており、グループによって
いろいろなシートが配布されました。

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Kitaoka, A. and Ashida, H. (2007) A variant of the anomalous motion illusion based upon contrast and visual latency. Perception, 36, 1019-1035.

(授)「このシートを振ってみてください。どのように見えますか。」

(生)「…? あっ、動いてる、動いてる!」

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動いて見える生徒と、動いて見えない生徒とがいて、教室内のあちらこちらで
グループの枠を超えて話し合いの輪が広がっていきます。

(授)「この絵がなぜ動いて見えるのか。それを考えると先ほどの絵が渦巻に見える
   理由がわかるかもしれません。」

(生)「残像じゃないの」
   「この前やった、慣性の法則とか関係してるんじゃない?」
   「ぱらぱら漫画の原理…とか?」


…… このような学習過程を通して、生徒たちは「目は、動いているものを見る」
「輪郭を見る」といった、目の働きの核心に近づいていきます。

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今回は「理科」における学びあいの例をご紹介しました。

理科において学びあいの場面を設定しようとすると、まずは「実験」が思いつくわけですが、
ただ「実験をする」だけでは学びあいにはなりません。
実験を通して生徒たちが「疑問」を発見できること、そして、その解決のルートをいろいろと
試行すること。さらにその結果を思考すること。この流れの中に学びあいの場面があります。
そのことを、今回の授業は実践を通して、見事に示していました。

また、学びあいを成功〈成立〉させるか否かは、教師の発問に左右されることも、この授業が
教えてくれました。この授業では的確な発問が随所に見られました。

学びあいのルートと発問―――この開発が一人ひとりの教師の課題であると実感しています。
プロフィール

2000年度より開智学園の教育理念を具現化するための新教育システムの構築に取り組み、2005年度に「S類」をスタートさせる。独自に開発した【S類メソッド】の柱の一つに『論理エンジン』を位置づけ、3つの力(論理的思考力、判断力、表現力)の総合体としての「智力」の育成に大きな成果を上げている。また、独自の理論に基づく「ソーシャル・スキルの育成」も人間力の向上に大きな効果をもたらしている。 趣味はギター。

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